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純度120%! 驚異の実写化! 映画『地獄少女』評価・ネタバレ感想!

 

大人気アニメ(漫画)の『地獄少女』が実写映画化と聞いた時は歓喜と不安でいっぱいだった。そして、監督が白石晃士監督だと聞いた時、不安は一気に消え去りただ公開日を待つ日々が始まった。小学生時代に原作を観ていた私だったが、2期以降は全く観ていなかった。そのため、映画に間に合うよう取り急ぎAmazonビデオで4期まで全84話を完走。以前に実写化を果たしている連続ドラマの方は未見。公開日前日まで地獄少女に入り浸る生活だったので、アニメとの違いにいささか戸惑うこともあるかと思っていたが、なんと全く違和感のない作りであった。さすがは白石監督。

 

この白石晃士監督にも言及せねばならない。私が初めて観た作品は白石監督が制作した『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』というホラービデオシリーズである。暴力プロデューサーとアシスタント、カメラマンの3人の映像制作チームが、口裂け女や幽霊といった怪奇現象を追ううちに世界の命運をかけた戦いに巻き込まれていくという壮大な物語。予測不能な展開と特徴的なキャラクターが魅力で、今でもニコ生配信で記録を打ち立てるほどの人気がある。白石監督は他にも『ノロイ』、『オカルト』、『カルト』などの信仰や宗教に関連するホラー作品を手掛けており、しかもそのどれもが高く評価されている。ホラー映画界隈では彼の名前を知らない人はいないだろう。

 

そんな白石監督は『貞子VS伽椰子』という出オチのような作品すらも、見事な手腕で一流ホラー作品に仕上げてしまった。前作『不能犯』は松坂桃李や沢尻エリカといったメジャー俳優が出演する作品で、こちらも復讐に関する話である。ただ、そんな白石監督に不幸な出来事が起きたのは今年の始めのことであった。公開間近の映画『善悪の屑』が、主演俳優・新井浩文の事件により公開中止となったのである。被害者もいる事件ではあるし、この決断も分からなくはないが、原作のファンとして、そして白石監督のファンとしてはかなりダメージを受けた。長い時間をかけて作品を完成させた作り手の側もそれは同じだろう。要は、白石監督ファンは今年の始めに一度スカシを喰らっているのである。

 

そんな状態で遂に鑑賞することができた白石監督の最新作『地獄少女』。大人気アニメなので批判もされるだろうが、私にとっては本当に傑作だった。今年1番良かったかもしれない。『善悪の屑』の一件で行き場を失くした私たちの恨みがようやく晴らされた。

 

 

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貞子vs伽椰子

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不能犯

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午前0時にのみ繋がる「地獄通信」というサイトに恨んでいる相手の名前を書き込むと、地獄少女が現れ相手を地獄に流してくれる。設定は原作そのままで、地獄少女が三藁を従えている点や地獄少女の謎を追うフリーライターが登場する点はアニメ1期と同様。アニメでは、地獄少女と繋がっている少女・つぐみと、その父である一が、恨んだ相手を地獄に流そうとする人々に接触し、説得を試みていくというのが大筋であった。しかし結果は惨敗で、どれだけ一が訴えようとも契約者は藁人形の糸を解いてしまう。今回の映画にはつぐに置き換えられる少女は存在せず、原作で執拗なまでに描かれた「地獄流しは正義か悪か」という視点は最低限に抑えられている。

 

代わりに映画で強調されているのは「地獄」。地獄少女との契約は、糸を解けば相手は即座に地獄に流されるが、自分も死後に地獄に行くことになるというもの。つまり、「自分の地獄行きを決定づけてまで相手を流したいか」という点が重要になってくる。アニメでは大概の場合、何らかの形で人形の糸は解かれ、それが救いになることもあれば、実は恨んだ側の勘違いだったというオチもあった。映画はこの人間ドラマの部分を色濃く描き、尚且つ「自分も地獄に行くことになる」という恐怖に説得力を持たせている。

 

地獄通信に名前を書き込むと、その場でいきなり画面に引きずり込まれ、地獄がどんなものかを味わうことになる。早苗の場合は首から下が幼虫のようになり、美保は針で串刺しにされた後に炎で焼かれた。そこから湖へと瞬間移動し、地獄少女が現れてシステムの説明を始める。この「依頼者が1度地獄を体験する」という演出は映画独自のものである。しかし、これにより地獄流しの覚悟が相当なものであることが観客にも伝わり、より魅力的になっている。確かに、アニメ版では「あなたも地獄に流される」と言っているだけで、実際に地獄がどんなものなのかという説明はない。それなのに依頼者が「私も…地獄に…」と苦悩するセリフだけは発するという珍妙なものになっていた。実際、地獄流しを「相手を永遠の地獄に流す行為」ではなく「逮捕されることなく相手をこの世から消す行為」として解釈していたようなエピソードも多々ある。この設定改変は非常に良かった。

 

 

地獄少女

地獄少女

 

 

 

更に白石監督は、閻魔あい達のキャラクター性を排した。あいと三藁の奇妙な絆が地獄少女における重要なファクターであることは間違いないが、ホラー映画として成り立たせるためには彼らのキャラクター化は不要どころか邪魔になってしまう。そのため、あいや三藁の背景はほとんど描かれず、セリフも少ない。温和な輪入道も、イケボの一目連も、遊びたがる骨女もいない。この映画に登場するのは人間を地獄に流すだけの怪物なのだ。ただ、背景が語られないおかげで原作を知っている人も逆に違和感なく鑑賞することができる。

 

そして代わりに物語を動かしていくキャラクターは平凡な女子高生の美保(森七菜)。引っ込み思案でクラスメイトにうだつの上がらない彼女が、好きなヴィジュアルバンドのボーカル・魔鬼(藤田富)のライブで、自分を痴漢から救ってくれた遥(仁村紗和)と友だちになるが、遥に目を付けた魔鬼は彼女を洗脳して……という物語。前半は美保と遥の出会いと共に、魔鬼に最初に見初められたアイドルの早苗(大場美奈)のエピソードが描かれる。ライブ中に観客の男に突然顔をメッタ刺しにされた彼女は、アイドルとして再起不能なほどの傷を負ってしまい、地獄少女と契約する。地獄少女を追いかける工藤(波岡一喜)に藁人形のことを話すと必死に止められるが、早苗の傷を見た少年が驚いて逃げるようにして去っていくことに落胆する。しかし、少年が戻ってきて謝罪をしたことで、彼女の決心は揺らぐ。この「いかにも」な上げ方がニクイ。

 

少年の一件で世界は捨てたものじゃないと思わせてからの絶望。早苗のもとに犯人からの手紙が届く。謝罪文だということで弁護士から手渡されるが、中には「ざまあみろ。お前の人生を台無しにしてやった」という怨嗟の言葉が綴られていただけだった。希望を失くした早苗は工藤を呼び出し、人形の糸を解く。後日、犯人の母親に早苗がそのことを話すと、今度は母親が地獄少女と契約し、早苗はライブ配信の途中で地獄に流されてしまう。復讐が復讐を生むというテーマはアニメでも濃厚に描かれてきたものであり、原作ファンなら早苗が母親に地獄通信のことを話した時点で展開が読めてしまうだろう。だが、この胸糞悪さこそが地獄少女の醍醐味なのだ。

 

 

地獄少女 二籠 オリジナルサウンドトラック

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一方、早苗に代わって魔鬼のバンドのコーラスオーディションに合格した遥は、薬漬けにされて魔鬼に洗脳されてしまう。美保は遥に二度と関わらないようにと告げられるが、初めてできた友だちを救うため、彼女は行動を開始する。手始めに遥の家に赴くと、彼女は母親に暴力を振るっていた。一人ではどうにもならないと思った美保は、以前に出会った工藤に連絡し、魔鬼から遥を救ってくれるように依頼する。

実は工藤仁と市川美保というのは、『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』のメインキャラクターと同じ名前。なので白石監督のファンなら名前だけでついニヤニヤしてしまう。しかも工藤仁は『コワすぎ!』の工藤仁と共通する部分も多々あり、工藤と市川が共に戦うというこの構図はワクワクが止まらない。また、魔鬼を演じる藤田富は『仮面ライダーアマゾンズ』で主人公の遥を演じており、彼のライバルが仁という名前だった。こういったネーミングにも意図的な何かを感じてしまう。

 

工藤と美保は遥を車で誘拐し(これも『コワすぎ!』で観た誘拐のやり口で笑ってしまう)、真実を告げる。魔鬼は部下と、遥をライブ中に殺害することで神を降臨させる計画を立てていたのだった。遥の持ち物に盗聴器を仕掛け、これで魔鬼を倒せると思ったが、実は遥は既にこの計画を知っていた。魔鬼は工藤を監禁して殺害。翌朝、美保はニュースで工藤の死を知る。部屋で一人、魔鬼が許せない彼女は遂に地獄少女と契約。藁人形を持って、遥の死が予定されているライブ会場へ足を運ぶ。

 

ライブの途中に藁人形の糸を解き、魔鬼は地獄へ流される。遥を殺す計画も美保によって崩され、事件は魔鬼の失踪という形で終結を迎える。ラストシーンは以前にも二人が心を通わせた公園で、仲良く景色を見る場面。暴力・セックス・クスリが蔓延する世界で、美保の「友達を救いたい」という純粋な願いが浮き彫りになる。彼女のやったことが正しいか否かという問いかけはなく、ただ「そうするしかなかった」、「そうまでして人を救いたかった」想いだけが存在しているという美しいラスト。『コワすぎ!』のトイレの花子さん回もそうなのだが、白石監督は女の子同士の友情を書かせると本当に巧い。冒頭の遥のセリフ「この世界なんてぶっ壊れちまえばいい」に対して美保が「この世界には、私もいるよ?」と問いかけるシーンだけで既にジーンときてしまっていた。

 

地獄流しに対する覚悟に説得力を付与し、あいと三藁のキャラクターを排した本作はホラー映画としての側面が強調されている。復讐、地獄、友情というのは白石監督の本骨頂で、正に監督こそこの実写化に適任であったと言えるだろう。もちろん閻魔あいによる地獄流しのシステム説明は原作通りのセリフがよかったとか、三藁がナチュラルにコーラスしているのがちょっと面白くなっちゃっているとか、そういう不満はあるのだが、それは些細なことに過ぎない。ここまで見事に原作の魅力を損なわず、ちゃんと独自のカラーを維持していることにただただ脱帽である。映画の言葉を借りるのなら、「純度」が非常に高いのだ。

 

もし超駄作が出来てしまって「いっぺん、死んでみる?」とか言いながらオススメするようになったらどうしようかとも思ったが、やはり白石監督は信用できるし、今回は原作の魅力と監督の持ち味が相乗効果をもたらした稀有な例だろう。どっちのファンにもおすすめできる、見事な一作だった。

 

 

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