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映画『X-MEN ダーク・フェニックス』評価・ネタバレ感想! 微妙と最高が同居する複雑な完結編

 

週刊文春シネマ特別号「X-MEN」シリーズ 最強ガイドブック (文春MOOK)

 

遂に完結してしまった『X-MEN』。今となってはアメコミ映画は映画界にとって欠かせない存在になったが、その原点はX-MENシリーズである。X-MENの映画がなければ、スパイダーマンもMCUもダークナイトもなかったかもしれない。X-MENシリーズはアメコミ映画というジャンルを誕生させ、存続を決定づけた偉大なシリーズなのである。

 

しかし、そんな偉大な作品であるにも関わらず、その評価はかなり微妙。作品が公開されるたびに、設定の矛盾や面白さのムラに苦しめられたファンたちの中には、MCU派へと流れてしまった者たちも多いだろう。そして、今作『X-MEN ダーク・フェニックス』も、20世紀FOXがディズニーに買収された関係で最終作に「なってしまった」という不幸な作品である。元々は新たな3部作の1章として作られたという噂もあるため、突然の完結の余波により、この映画はかなり難産だったのではと思われる。結果的には、やはり過去の作品と矛盾するラストに繋がってしまい、非常に残念。しかし、中身はやはりいつものX-MENであり、期待を裏切らない堅実な面白さがあった。

 

そもそもこの映画がどういう立場なのか、X-MENシリーズにおいては、作品の時系列というのが非常に重要になる。最初に公開されたウルヴァリンを主役とした『X-MEN』、『X-MEN2』、『X-MEN ファイナル・ディシジョン』は2000年以降が舞台となっており、公開時期とリンクしていた。また、『ファイナル・ディシジョン』で登場するジーンのもう1つの人格・フェニックスという存在が今回の映画でもカギになる。『ファイナル・ディシジョン』ではスコットが殺され、プロフェッサーが殺され、最後にはフェニックスごとジーンも死ぬことになった。しかし、プロフェッサーに関しては病室で指をピクリと動かす描写があり、結局生存することとなった。そして若き頃のプロフェッサーたちの活躍を描く新たな3部作が始動する。今では『キングスマン』で圧倒的なセンスを見せつけたマシュー・ボーン監督が『ファースト・ジェネレーション』という傑作を完成させ、シリーズ生みの親であるブライアン・シンガー監督が『フューチャー&パスト』で作品の時系列をリセット。これにより、ジーンの中のフェニックスが暴走しスコット達が死ぬ未来がなくなり、世界は新たに分岐していく。その次の作品『アポカリプス』では最強のミュータント・アポカリプスの復活と若きX-MENとの対決を描き、プロフェッサーの想いがスコット達に継承されていくという流れ。

 

 

 

 

正直、『アポカリプス』で終了していてもシリーズはかなり綺麗にまとまっていたとは思う。だが、『ダーク・フェニックス』も決してつまらないわけではなかった。むしろ、分断と結集を繰り返してきたX-MENが新たな敵を前に遂に呉越同舟し、一丸となって敵に立ち向かう姿は感動の一言に尽きる。

 

今作の展開で最も衝撃を受けたのはやはりレイブンの死。新たな3部作で急にヒロイン面をし始めたこの青い変幻自在女が遂に死亡。しかも彼女を殺したのは力を制御できなくなったジーン・グレイ。これにより、彼女に真実を隠したプロフェッサーの責任問題が問われ、ハンクがX-MENを離脱しマグニートーと共にジーン殺害を目論むという衝撃の展開。プロフェッサーが酒浸りの廃人になろうと、彼のもとを離れなかったハンクが愛する人の死で彼を糾弾するシーンは非常に心苦しいものがある。そしてまた、真実を隠されたジーンもプロフェッサーに対して憎しみを抱くようになってしまう。

 

相手が人間だろうとミュータントだろうと、その善性を信じ続けるプロフェッサーだからこその決断。それが裏目に出て彼は多くの仲間を失うこととなった。また、隠遁生活を続けていたマグニートーが、レイブンの死を知って再び戦場へと赴くシーンも辛い。前作で妻と娘を失った彼が再び大切な人を失う展開。どれだけ彼を苦しめれば気が済むんだこのシリーズは。『ファースト・ジェネレーション』から培ってきた関係性が、ジーンの暴走によって新たな図を描く。お馴染みのミュータント対決も素晴らしいが、やはり最終決戦が圧巻の出来。

 

宇宙から来た新たな敵に対し、捕らえられていたミュータント達が一斉に蜂起する。マグニートーがメンバーに的確な指示を出し、ナイトクローラーが軍人を殺され怒り狂う。特にマグニートーの戦闘シーンは素晴らしく、電車をくしゃくしゃにしてポイしたり、銃火器を一斉に放ったり、とにかくやりたい放題。おそらくシリーズ随一の大活躍。もうこのバトルシーンだけで鑑賞料金の元は取れる。脚本など気にせずただエリックの芸に魅せられれば良い。そしてラストバトルでのジーンの圧倒的無双。唯一無二の力を手に入れた彼女の強さは、『ファイナル・ディシジョン』でのフラストレーションを一気に吹き飛ばす。しかし、敵にテレパスが使えないせいでプロフェッサーはまたも無能になってしまった……。

 

繊細な心の動きと凄まじい能力戦のメリハリが、心地よく脳を揺さぶる素晴らしい展開。MCUほどの派手さはなくとも、X-MEN達のナイーブさが心に沁みる。「ああ、今俺はX-MENを観ている!」という気持ちに浸ることができる見事な作品だった。しかし、やはりケチをつけたくなるのもX-MENシリーズの醍醐味。ここからは少し不満を述べていく。

 

まずはクイックシルバーの簡素な退場について。『フューチャー&パスト』から登場し、圧倒的なスピードで必ず大活躍シーンを作ってしまう恐ろしいミュータント。『アポカリプス』での救出シーンは圧巻の一言で、しかもマグニートーと親子という関係性にも踏み込み、彼の魅力はどんどん増していった。そんな流れのはずが、今作では中盤でジーンと戦った際に吹き飛ばされ、戦闘不能に。最終決戦までに回復することもできなかったようで、結局彼はそこでリタイアすることになってしまった。役者の都合を疑ってしまうくらいの唐突な退場(というか退場したことすら気づかなかった)。過去2作では大活躍だった上に、マグニートーの息子という特別な出自もある分、見せ場を作ることは十分に可能だったはず。何故彼をあそこで退場させてしまったのか。

 

そして、過去作で描かれた未来に直結しないというモヤモヤがある。映画のラストでは、暴走を抑えきれなかったジーンは被害を食い止めるために自ら宇宙へと飛び立つ。また、プロフェッサーは学園を引退し、マグニートーとカフェでお茶。このシーンでマグニートーが彼を「友達」と表現する脚本も気が利いている。この二人の物語の落とし所としてはこれ以上ないほど余韻のあるラストだ。

 

しかし、この結末は『フューチャー&パスト』で描かれた改変後の未来と明らかに矛盾する。ウルヴァリンが目覚めた際、ジーンとプロフェッサーはまだ学園に残っていた。つまり、その未来に繋がるためには空へ飛んだジーンも学園を去ったプロフェッサーも何らかの理由で再び舞い戻ってこなければならないのである。不可能ではないかもしれないが、あの終わり方で「やっぱりもどりましたー」ではさすがに興ざめ。ウルヴァリンが戻った未来が実は別の世界線であったと無理やりに解釈することもできるが、そういった説明もないし、やはりこちらで勝手に辻褄を合わせるか、気にしないでいるかしかない。映画のラストがとてもよかっただけに、過去作をおざなりにした構成には大きな不満が残る。

 

とはいっても、長く続いたX-MENシリーズが、変に雰囲気を変えることなく完結してくれたのはとても嬉しい。分断と呉越同舟の繰り返しで成り立ってきたシリーズが、ミュータントが一丸となるという結末を迎えてくれたのは素晴らしいことである。直近ではディズニー傘下で初となる『デッドプール3』が公開され、その後はMCUにX-MENが登場する展開もあるかもしれない。ただ、その場合にキャストが続投となるかは不明。むしろ、スパイダーマンのように新たな世界線のX-MENが登場する可能性の方が高いだろう。ジェームズ・マカヴォイとマイケル・ファスベンダーがハマリ役だったので、正直今は彼ら以外のメンバーは考えられないが、天下のMCUならきっとうまくやってくれるのではないだろうか。

 

 

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