映画『バトル・インフェルノ』評価・ネタバレ感想! バカ映画のノリから一転、恐怖のどん底へ

バトル・インフェルノ(字幕版)

 

悪魔祓い系Youtuberのマックスくんは今日もヤラセ除霊動画でPV稼ぎ!、と思いきやなんとそこに本物の悪魔が現れて…という、もう一笑に付してしまえるようなおバカなストーリーなのに非常に陰惨で血みどろな戦いが繰り広げられていつの間にか目が離せなくなっていた。前半の笑わせるノリから一転して悪魔が現れてからの戦いの壮絶さがとんでもない。アルバトロス配給はごくごく稀に期待値をぐんと超える作品が出てくるから見逃せないのだ。

 

イケメン神父のマックスと、その親友で有能な裏方演出家のドリュー。出だしのヤラセ動画の最後に「チャンネル登録してね!」のお馴染みな画面が出るのも笑うし、お祓い用の布を使うと「バチカン公認!」とバナー広告が出るとか、如何にもなオープニングの演出とか全てが面白可笑しい。こういうニセ神父ものだとイーライ・ロスが関わった『ラスト・エクソシズム』を思い出す。こっちは釣り糸でベッド動かしたりボタン押したら煙が出る十字架なんかを使ってとりあえずの悪魔祓いをする神父のモキュメンタリー。一方『バトル・インフェルノ』は配信モノなので、Youtubeあるあるが随所に盛り込まれている。主人公は登録者数やPVを気にしていて、SNSに公式マークがつかないことに不満を募らせている。ファンを自宅に連れ込んでしまうクズなのだが、とにかく顔がいい。

 

親友のドリューは妻のレーンと共に配信に関わっており、マックスとは昔からの親友で兄弟のような間柄。音響や演出等、番組の全てを統括していて、欠かすことのできないプロデューサーだ。しかし、そんな二人の絆も、突然の悪魔の登場で亀裂が入る。役者が来ないせいでレーンに悪魔憑き役をお願いすることになったのだが、なんと彼女に本物の悪魔が憑依してしまったのだ。この女優さんの演技や表情や仕草、ほとんど椅子に括りつけられているのにかなりの凄味があって、もう彼女の表情や動きだけでだいぶ怖い。

 

悪魔は手始めに恰幅のいい男性スタッフを丸焼きにする。女性スタッフが消火器で火を消そうとするが、消火器からも炎が噴射され結局男性は助からない。怯えたマックスはすぐさまカメラに向かって助けを請い、ドリューは配信を止めようとするが、悪魔はそれを許さない。レーンを人質に取り、配信を続けるように要求するのだった。マックスを裸にし、照明のプロペラを落として床にガラスの破片を散りばめた上で軽快な音楽に乗せて彼にステップを踏ませる悪魔。レーンの口からマックスが使っていた除霊用の布を吐き出し、全て嘘であると告白させる悪魔。マックスに首を吊らせて視聴者のハートが100%集まれば解放すると提案する悪魔。とにかくマックス達に様々な試練を強いるのだが、それには秘密があり、そのために悪魔は配信の視聴者を増やそうとしていたのだった。

 

前半の軽快なノリが悪魔の登場で一転する演出は見事。演者の動揺が見事にこちらに伝わってくる。その後もマックスの度重なる懺悔と、仲間を見捨てようとしない勇気が胸を打つ構成。配信時間をフルに使おうとする悪魔の目論見が、マックス達が悪魔の名前を特定し祓いの言葉を見つける時間稼ぎと呼応している設定も見事。最終的に悪魔がアモンだと判明すると、カメラやドリューの眼鏡、原本など至る所の文章を参考に祓いの言葉を唱える2人の掛け合いが最高だった。妻のレーンは実はマックスの元恋人だったことが判明し激昂したかのように見せて悪魔を欺くやり方。若干気づいてはいたけど、テンションが上がるやつだった。

 

間で挿入される世界中の視聴者の演出もよかった。物語のテンポがよくなるし、マックスを助けようと必死にハートを連打する子どもが健気でかわいい。配信された映像を観ている人たちが戦力になるタイプの映画としては、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』と同じ。それを基にした『サマーウォーズ』も然り。私はデジモン世代なので世紀のバトルが全世界に配信されていて視聴者が応援しているという状況のリンクにとても好感を持った。まあデジモンは称賛されるヒーローで、こっちはペテン師なので信用度はまるで違うのだけれど。

 

アモンを倒してめでたしめでたし…で終わればよかったのだが、そこで更なるどんでん返しが待っていた。実は悪魔の正体はアモンではなく、視聴者を増やすためにわざと倒されたフリをしていたのだ(悪魔のくせに視聴者のテンションの上がり方を把握してるのがなんかかわいい)。最初に焼死した男性スタッフの死体が突如動き出し、その中から角を持った漆黒の悪魔が登場。悪魔はカメラをじっと見つめ、そこで配信が終了する。世界で配信を観ていた人々は何かに憑りつかれたかのように近くにいる人々を殺害。あの必死にハートを連打していた子供がアメリカ大統領の息子だったのもびっくりだし、そのまま大統領殺しちゃう流れなのも驚いた。

 

ただ、個人的にはこのエンドはそんなに好きじゃないかなあ。やっぱりエセ神父が自分の過去や欺瞞を乗り越えて友情を選択し悪魔に打ち勝つ話であってほしかった、という思いが強くて。マックス達は戦いを終えた直後なので世界が大変なことになっているとは気づいていないし、何ならレーンを取り戻せたしよかったねとなっているのだけれど、結果的には悪魔の思惑通りにことが進んでしまっているので敗北エンド。やっぱりニセ神父に悪魔は倒せなかった、というオチなんだけど、自分の言いたくない過去をあれほど晒したマックスに対して同情しちゃってるのでこの負けとハッキリ彼に伝えない負け方で終わるのが釈然としないというか。やっぱり彼らには勝ってほしかった……。

 

ただ、総じて物語の演出や演技力は凄味があって、展開もぐいぐい引き込んでくれるタイプだったし設定も良かったしで結構楽しむことができた。ドリューが配信で使っていた悪魔のデータベースが、実は悪魔自身が作ったものだったのは結構ウケたし。でもやっぱり恐怖が強い作品だったからこそ最後はすっきり終わってほしかったなあ、と。好みの問題だけどさ!

 

 

バトル・インフェルノ(字幕版)

バトル・インフェルノ(字幕版)

  • 発売日: 2020/09/02
  • メディア: Prime Video
 

 

 

デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム

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