ミーアキャットスペース

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映画『マッド・ハウス』評価・ネタバレ感想! ご近所洗脳系ホラー

マッド・ハウス(字幕版)

 

同名のアニメ制作会社とは当然何の関係もなく、引っ越した先の住人たちがとんでもない奴らだった!という映画。精神を痛めつけて隷属させようとするタイプの映画は結構あるが、低予算でここまで表現できているのはお見事。物語も起伏に富んでいるわけではないのに、イヤ~な感じを90分近くずっと保てているために観ていて飽きない。ちょっと怖いの観たいなあくらいの時に観るとめちゃくちゃ面白く感じるかもしれない。それくらいよくできた作品なのである。

 

法律事務所で働くサラは仲の悪い両親の元を離れ、一人暮らしを始める。とあるマンションに引っ越した彼女に優しく声をかけてくれる近隣住民たち。しかしサラは、ペット不可の物件なのに話し相手が欲しいと猫を飼ってしまったことを周りに言い出せずにいた。すると「ペット禁止」という紙を部屋に入れられるなどの嫌がらせが続き、ある夜目覚めるとオーブンの中で猫が焼かれていた。侵入者=隣に住んでいたイケメンに襲われた彼女は命からがら外へと逃げ、親しくしていた女性に助けを求めるが、実はマンションの住人全員がグルだった。スタンガンで気絶させられた彼女が目覚めると、男たちはランプが点灯している間、壁に手を突き腰を低くしていろと脅す。

 

『ミッドサマー』じゃないが、新居に引っ越してきたという新たな生活の始まりの予感が既に不穏な空気を漂わせている。ある本を押し付けてくる不気味な眼鏡の男・レスター。隣人のイケメンも何かと話しかけてくる。ご近所付き合いが苦手な人なんかは見ていて発狂してしまうかもしれない。だって急にパーティーに誘ってくるんだぜ??

そして壁に手をついていられなかったサラはお仕置に手を釘で壁に固定される。何故こんなことをしなくてはならないのか、全く分からないサラと同様の私たちは物語にぐいぐい引き込まれていく。しばらくして彼女は試験に合格し、マンションの住人たちに認められる。しかしそこに広がっていたのは何とも言えないディストピアだった。共同体の利益のみをひたすら追求し、個の感情は無視されてしまう世界。このような行き過ぎた社会主義は映画や小説でよく見るが、あくまでマンションの中だけという規模の小ささが逆に身近な恐怖になっている。

 

共同体の利益が優先されるこのマンションでは、人々の生活は隅から隅まで監視され、役に立たない人間は生きる価値がないと判断される。動けなくなったイーディという老婆は住人たちに看取られながらあっさりと殺されてしまった。サラの交際相手も勝手に決められている。それはリサが当初怪しんでいた男・レスターだった。レスターにはジェシカという恋人がいたが、彼女がいなくなって以来落ち込んでしまっていたのだ。レスターもリサと同様の試験を受け、合格後5年間は脱出のことだけを考えて暮らしていたものの、ジェシカに会って全てが変わった。セリフだけの設定なのだけれど、こういうリアルさが逆に怖い。

 

その後、サラの同僚だったリサがマンションを訪れ、なんと契約まで済ませてしまう。案の定リサも試験を受けることとなり、サラは久々に彼女と再会するが、彼女の「自分の人生でしょ」という言葉で正気を取り戻し、マンションのリーダーを殺害して逃走。その時、リーダーにも他の住民と同様に焼印があることに気づく。では、このマンションを監視している者は、このシステムを指揮している人間は一体誰なのか。リサはあっさりと殺されてしまい、銃を手に入れたサラはレスターの助けを借りて見事に脱出に成功する。そして、彼女は本の著者であるエラビーこそがこのシステムを作り完成させた張本人であると知る。しかし、マンションを出た先ではいくつもの集合住宅からサイレンが鳴り響いていた。エラビーのやり方を導入したのは彼女のマンションだけではなかったのである。物語は不気味にサイレンのなる夜道を駆け抜けていくサラの後ろ姿でエンドロールを迎える。

 

この映画に出てくる本の著者エラビーが提言する社会主義思想において重要な4つの要素。無私、心の解放、受容、監視。

自分ではなく他人を思いやるようになる無私。互いに秘密をなくしなんでも話せるようにする心の解放。罪を犯した相手に罰を与えることで清算する受容。そして、偽りのないように監視する。マンションの中であるため確かに規模は小さいのだが、精神をどんどんイカれさせる要素がこの4つに見事に凝縮されており、「絶対こんなマンション住みたくねえ」という気持ちがしっかりと湧いてくる。私は隣に住んでる人の名前すらも知らないぐらい近所付き合いが嫌なので、正直話しかけてくる隣人というだけでアウトだ。

 

隣人トラブル豪華版の枠に収まらず、観ている側の精神までも徹底的に痛めつけようとする意地の悪さ。いやでもここまで極端じゃないとはいえ、DV問題なんかでもあるように洗脳って本当に身近に存在するものなので…。マンション住民たちの小さなディストピアという点が逆に親近感を醸し出していて不気味な1作だった。

 

 

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  • 発売日: 2020/10/02
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