世界観の練り上げに思わず感服! 映画『パペット大騒査線 追憶の紫影』評価・ネタバレ感想!

パペットとは指人形を指す言葉で、操り人形と指人形を兼ね合わせたものはマペット(マリオネット+パペット)と言うらしい。つまりパペットマペットには意味合いとして、指人形が2回と操り人形が1回入っていることになる。しかも実際にはウシくんとカエルくんを手に装着しているだけなのでパペットでしかない。令和に入ってまさかパペットマペットの真実を知ることになるとは思わなかった。 マペットという技法はセサミストリートの生みの親であるジム・ヘンソンが開発したものなのだが、彼の息子であるブライアン・ヘンソンが父親が創作したシステムを使って好き放題やった作品が、この『パペット大騒査線 追憶の紫影』。紫影は、「パープル…

映画『殺人鬼を飼う女』評価・ネタバレ感想! 純文学的なエロスが漂う微ホラー作品

大石圭の同名小説を、『リング』などで有名な中田秀夫監督が映像化。大石圭は『呪怨』のノベライズ版も執筆しており、奇しくも日本が誇る二大ホラー作品に携わった2人のコラボということになる。ただ、中田秀夫監督の作品は『リング』こそ社会現象を巻き起こしたものの、その後は鳴かず飛ばずの出来。山田孝之と藤原竜也のW主演作『MONSTERZ』は興行的に振るわず、『リング』を現代的な視点で描いた最新作の『貞子』も一昔前のホラー描写と貞子という看板に頼っただけの、陳腐な出来だった。そう、「あの『リング』で有名な中田秀夫監督のホラー最新作!」と聞いたら我々はある程度身構える必要性に駆られているのである。 映画として…

襲い来る動物たちのリアリティに戦慄! 映画『アニマル・パージ』評価・ネタバレ感想!

2019年8月末、多摩動物公園にて、飼育員がサイに襲われて死亡したという事故があった。動物園の動物は人々にとって親しみやすい存在であるし、動物園側も動物について知識を深めてほしいという意識がある。その反動もあり、この事故はショッキングな事件として話題になった。檻や柵越しに観察するせいでキャラクターと見做されてしまうこともあるが、動物園の動物たちは言わずもがな生物なのである。中には人間よりもはるかに優れた筋力や脚力を持つものもいる。もしそんな動物たちが人間に牙を剝いたら一体世界はどうなってしまうのか…。そんな潜在的な恐怖を映像化したのがこの『アニマル・パージ』である。 ある動物園で飼育員がホワイ…

映画『IT/イット THE END それが見えたら、終わり。』評価・ネタバレ感想! ITの続編はホラー薄めの青春ドラマ

スティーヴン・キングの代表作を映画化した『IT/イット それが見えたら、終わり。』の続編にして完結編が遂に公開された。ルーザーズ・クラブがイットと戦ってから27年後の2016年。デリーに再びイットが現れたことを知ったマイクは、他のメンバーに「約束を果たす時が来た」と電話をかける。マイクの話を聞いて幼き日の記憶を取り戻した6人は、自らを襲った恐怖と再び対峙することになってしまったのである。 原作は文庫版で2000ページ近くにも及ぶ大長編で、1990年には1度テレビスペシャル版も作られている。そんな物語を再び実写化することには相当なプレッシャーもあったのだろうが、前作の結果はなんとホラー映画史上N…

映画『ジェミニマン』評価・ネタバレ感想! 2人のウィル・スミスが醸し出す日曜洋画劇場感

「ウィル・スミス VS ウィル・スミス」という心躍る見出しが目を引くが、どうやら興行収入の面では苦戦しているようだ。 CG技術の進歩で同一人物が画面に複数存在することはもはや珍しくはないし、『スター・ウォーズ』なんかでは亡くなった役者を合成で再現していた。そのある種の到達点がこの『ジェミニマン』である。国家直属のアサシンであるヘンリーを襲撃したのは何と若い自分だった、という物語。 題材を聞いて思い出したのは『LOOPER』という映画。後に『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』を監督することになるライアン・ジョンソン監督の作品で、未来から送られてくる犯罪者の処刑をしていた主人公の物語。ある日送られ…

映画『スペシャルアクターズ』評価・ネタバレ感想! 逃れられない『カメ止め』の呪縛

『カメラを止めるな!』で一躍時の人となった上田慎一郎監督の最新作、『スペシャルアクターズ』を観た。結果から言うと、なるほど上田監督ってこういう作風なのねと勉強になったというか、どうしても『カメ止め』と比較してしまう内容であったと思う。冒頭オーディションのシーンで監督らしき男性に叱責されるのも、緊張すると気絶してしまう主人公が、スペシャルアクターズとして役割を演じ切ることで宗教団体を壊滅に追い込もうという話運びもどうも既視感があった。これを上田監督の作風ととるか、前作の焼き回しととるかでこの映画の見方は変わってくる。 『カメ止め』がヒットした要因に関しては様々な声が上がっているが、端的に言えばほ…

映画『マレフィセント2』評価・ネタバレ感想! おとぎ話から脱却した慈愛の魔女の物語

『眠れる森の美女』に登場しオーロラ姫に呪いをかけるヴィラン・マレフィセントが実は悪人ではなかったという大胆な解釈を、アンジェリーナ・ジョリーの凄味のある演技と強引な展開の力業で大成功させてしまった第1作『マレフィセント』に続き、ついに2作目が公開。原題は『MISTRESS OF EVIL』という副題がついているが、邦題はストレートに『マレフィセント2』。どちらにしても、続編であることに変わりはない。重要なのは、『眠れる森の美女』を下地に作られた1作目と違い、『マレフィセント2』は完全にオリジナルストーリーであること。映画のセリフにある通り、『眠れる森の美女』の物語ではなく、おとぎ話からも脱却を…

映画『楽園』評価・ネタバレ感想! この映画に犯人を求めてはいけない

『64』の瀬々敬久監督が吉田修一の『犯罪小説集』の短編2編を原作に傑作を作り上げてしまった。少女を殺したとされる容疑者の男(綾野剛)、失踪の直前まで友だちと一緒にいたことで罪悪感を抱えてしまった少女(杉咲花)、故郷の村を養蜂で立て直そうとするも住人から疎外されていく男(佐藤浩市)。三者三様の苦しみと決意が閉鎖的な限界集落を舞台に展開していく。瀬々監督の作品も吉田修一原作の作品も初めてなのだが、重苦しくて救いのない空気感にどんどん引き込まれてしまった。私は都会育ちのゆとり世代なので、田舎というものにあまり馴染みがない。同級生の言う「うちの地元田舎だからー」は多少の田畑があれば根拠として成り立って…

『ウルトラマンタイガ』前半(第1話~第13話)評価・感想 ウルトラマンが3人いる必要性を感じたい

既に第14話放送後なのだが、1クールを終え一区切りついたところで『ウルトラマンタイガ』前半(第1話~第13話)の感想をまとめようと思う。令和初のウルトラマンで、あのウルトラマンタロウの息子が主人公。その上タイガの他にタイタスとフーマ、合計3人のウルトラマンが主人公のヒロユキに憑依するという斬新な設定が話題を呼んだが、果たしてその試みはどうだっただろうか。 1話の冒頭からニュージェネレーションとトライスクワッドの面々がウルトラマントレギアに倒されてしまうという衝撃の展開。トレギアは『劇場版ウルトラマンルーブ』にも登場していたが、その時はロッソ・ブル・グリージョが合体したウルトラマングルーブの踏み…

本を馬を犬を駆使して生きようと藻掻く男の生き様 映画『ジョン・ウィック:パラベラム』評価・ネタバレ感想!

失礼な話ではあるが、人が必死になって生きようとする姿がどこか滑稽に見えることがある。この『ジョン・ウィック:パラベラム』にはそういう瞬間が何度も訪れる。思い返せば、1作目の時点で愛犬を殺された男の復讐劇と宣伝され、なんだそれと可笑しくなってしまった記憶がある。実際には最愛の妻を病気で亡くした失意の男が、妻からの最後の贈り物である愛犬を殺されたという背景があるのだが、確かに「犬を殺された男の復讐」も間違っていないのが面白い。しかし、そんなふざけたスタートから繰り出される物語は非常に重苦しい。妻を失い、犬を殺され、車を奪われた元最強の暗殺者が本気を出して殺しに向かってくる。当時話題にもなった『ドン…