ミーアキャットスペース

主に映画、ドラマ、漫画などエンタメの感想・考察をだらだら書きます。

実写映画『キングダム』ネタバレ感想! 良くも悪くも”原作通り”

 

映画「キングダム」オリジナル・サウンドトラック

 

世の中にはコミックの実写化映画というだけで、親を殺されたかのように拒否反応を起こす方が未だたくさんいらっしゃるようですが、私自身は同じ物語が別媒体で演出されるというのは物凄く好きでして。原作のテーマを汲み取っているか、2時間ほどの時間に収めるためにどこを削ったのか、どんな要素を追加したのかなどなど、自分でも何様だよと思うくらい作り手目線で、”どう実写に落とし込むのか”という観点から楽しんでいます。そのうえで、この描写を加えるのはとてもいい判断だったとか、あれを削ったら原作の良さは消えてしまうだろとか、ああだこうだ言うのが大好きなのです。

そもそも実写化映画の多くって原作ファン向けには作られていないのではと思います。普段漫画を読まなかったりそこまで漫画に熱意を持たない方を、「コミック界で大人気」という売り文句で映画館に連れてこようという策略が見え見えで、そりゃあ原作ファンの方々からしたら、勝手(勝手ではないですけど)に何をしてくれるんじゃという気持ちですよね。ただ、私自身は実写化がどうあろうと原作に突然山崎賢人が出てきたりするわけじゃないし、それはそれとしてかなり割り切って観ています。

そんなわけもあり、私が漫画の実写化映画を鑑賞する際のポイントを大雑把にまとめると、

①原作をどう解釈しているか

②解釈したうえで、放映時間にどうまとめているか

③原作をどれほど改変しているか

④原作の特徴をどのように映像に反映させているか

⑤原作関係なく、単純に1つの映画として面白いか

の5つです。

では、『キングダム』はこの5つに関して一体どうだったのか。私なりの感想をまとめていきたいと思います。

 

①原作をどう解釈しているか

これは要するに、制作陣が原作のどこに目を付けたのかということ。私としては『キングダム』の魅力は、ただひたすらに天下の大将軍を目指す信のまっすぐさと、若き秦の王である政の複雑な人間模様にあると思います。舞台は中華、戦乱の時代に生まれた全く身分の異なる彼らの奇妙な友情と、”戦い”や”国”に対する個人の思い。登場人物が多く、ともすれば複雑な物語になってしまうところを熱量やハイスピードの展開で綺麗に押し切り、見事な王道路線に仕上がっています。で、これが実写映画ではどうだったかというと、早い話が原作のまんま。大きな変更点はなく、漂の死、山の民説得、成蟜の残虐性などなど、原作でも印象的だった場面が実写の映像に落とし込まれていました。ただ、そこに独自の演出としてプラスアルファをするでもなくただ純粋に原作の内容を追うだけなので、既読の私からすれば正直面白味に欠けるなという物悲しさはあります。

 

②解釈したうえで、放映時間にどうまとめているか

コミックは週1や月1ペースで既に何年間も連載が続いているようなものが多いので、2時間程度の映画にまとめるのであれば必然的にどこを切り取るかという点が問題になってきます。意図的に続編を匂わせることも当然できますが、やはり1つの映画としてある程度収まりはついてほしいなというのが正直なところ。同じく山崎賢人が主演を務めた『ジョジョの奇妙な冒険』なんかはタイトルに『第1章』と入れるなど、かなり攻撃的な作品でしたが、結果はうまくいかなかったのか続編の情報は全くありません(ちなみに私はこのジョジョ実写大好きです)。で、この『キングダム』なのですが、実はそもそも原作への足し算や引き算がほぼありません。①と同様、原作通りなのです。しかしこれは映画制作陣の怠慢ではなく、キングダムの原作自体がそもそもそういう作品なわけです。

原作の1巻~5巻に渡って展開される政の弟、成蟜との戦いはここまでで大分綺麗にまとまっていて。今後の伏線等も少なく、信と政との出会いということでエピソードゼロ的な意味合いもあります。そのため、ここだけを切り取って実写化するのであれば特に映画オリジナルのシーンは必要なくなるわけです。ただ、奴隷商人に運ばれる信が王騎将軍を見かけ圧倒されるという冒頭のシーンはその後の王騎の扱いを考えると非常に有意義なものだなと感動しました。

 

 

 

 

③原作をどれほど改変しているか

②で触れた通り、ほとんど改変はありません。細かいセリフはオミットされていますが、展開は完全に原作通り。そこが逆に寂しい気もします。『テラフォーマーズ』なんかは話はつまらなかったですが小栗旬の怪演やテラフォーマー津波などの映画オリジナル要素がやけに面白かった記憶があるので。まあ、キングダムの序盤自体かなり完成度の高い物語なので、ここは敢えて原作のままで正解かなと思います。ただ、原作を何度も読んだ私にとっては、同じ話が繰り広げられるだけなので退屈でした。

 

 

テラフォーマーズ

テラフォーマーズ

 

 

 

④原作の特徴をどのように反映させているか

物語自体は原作通りでしたが、キングダムは戦乱の時代の話なので当然戦いが起きます。所謂能力バトルものではないので、演出の幅もだいぶ限られてくると思っていたのですが、映画では信たちの躍動感が見事に表現されていました。日本のアクション映画なんて大したことないだろと、邦画に嫌気が差している映画ファンが少なからず存在するのも事実ですが、この『キングダム』は十分アクション映画として通用するレベル。何より邦画ではまず見られないような(お金のかかったであろう)圧巻の映像が次々と出てきます。本当に”原作を忠実に再現しよう”という面で監督たちがかなり腐心したであろうことが伺え、ところどころ「原作まんまじゃん」と驚くような場面もあったり。山の民の拠点なんかも邦画ではなかなかお目にかかれないほどのクオリティーで、雄大な景色に感動させられ、大規模な戦闘シーンが心を湧き立てます。王宮ということもあり、出てくる場所がいちいち広い。無駄に広い。その奥行きこそが物語に深みを与え、実写化にリアリティーを持たせていました。

そういった意味で、原作ファンはかなり納得するんじゃないかなと思います。というか原作とあまり変わっていないので、よほど原作キャラに心酔していて三次元を認めないというほどでない限りは全然観られると思います。

 

⑤原作関係なく、単純に1つの映画として面白いか

正直、これが一番重要な要素です。原作をどれだけリスペクトしていようとオマージュしていようと映画自体が面白くなければ何の意味もありません。そういう意味で言うと、この映画はそこまで面白くありません。これはそもそも私自身が原作にそこまでのめり込めず30巻程度で挫折してしまったという理由もあります。ただ、鑑賞後最初に思ったのは「やはり佐藤信介監督だなあ」ということ。佐藤監督は近年立て続けに漫画の実写映画を監督しています。『GANTZ』、『アイアムアヒーロー』、『いぬやしき』、『BLEACH』など、おそらく皆さんも実写化の報せを聞いたことのある作品ばかりでしょう。原作のテーマをうまく汲み取り、とても丁寧に実写に落とし込む素晴らしい監督ではあるのですが、一つだけ弱点があります。それは、ドラマパートがつまらない。『アイアムアヒーロー』のZQNの演出も素晴らしく、『いぬやしき』の最終決戦空中バトルは見事な迫力、『BLEACH』も斬魄刀バトルが滑稽に見えないギリギリのところでうまく映像化していました。ですが、そのどれもドラマパートが絶望的につまらない。しかし、ずっとアクションをしているわけにもいかずどの映画にも必ず退屈な時間がやってきてしまうという一長一短な監督なのです。

そもそもコミックの場合、コマ割りや集中線、人物の表情や角度などから臨場感や緊迫感を演出することができます。しかし、実写にはそれがありません。もちろんそういったものを映像技法として持ち込むことは可能ですが、実写でそれをやればコメディものになってしまいます。つまり、ドラマパートや設定の説明場面では映像的な工夫が必要になるのです。佐藤監督はそこが弱く、ただ丁寧に映画を実写にしてしまうため、映像表現独自のカラーが全くありません。裏を返せば、それが嫌味のない実写化映画を作る秘訣なのかもしれませんが、原作も知っているこちらとしてはかなり退屈に感じてしまうのも事実。物語は特に変える必要もなかったと思うので、演出面で何か印象的なカットがあればよかったかなと思います。

よいところを一つだけ挙げるとすれば、場面転換の時の画面スライドです。これは『スター・ウォーズ』が定着させているやり方ですが、SWと同様に”伝説”の物語である『キングダム』の実写化にこれが取り込まれるというのはテーマ的にも非常に感動しました。ただ、SWを知らない方は、慣れない演出に違和感があるかもしれません。

 

 

アイアムアヒーロー

アイアムアヒーロー

 

 

 

 

 

最後に

山崎賢人、吉沢亮、橋本環奈という布陣に加え、実写化映画を数多く手がけている佐藤監督、そして圧倒的なスケール。主題歌もワンオクということで若年層へのアプローチが物凄く、映画館にも俳優目当てなのか若い女性のお客さんが多かったです。席もほとんど埋まっていて、興行収入的には大成功なのかなと。逆にあれほどのスケールとこのキャストでコケたら邦画はどうなってしまうんだと心配になりますが……。

ただ、肝心の内容については大した改変もなく原作をただ三次元に出力しただけという非常に忠実な映画。悪く言えば退屈。原作の完成度が高すぎるが故に、大して手を加える必要がなかったのかなと思われます。しかし、ドラマパートは退屈で、アクションシーンもたくさんあるというわけではなく。1本の映画としてはかなり微妙な出来でした。この様子なら続編も見込めそうなので、その辺りでどうシナリオを切り取るのかに期待したいところ。もし原作ファンの方で観ようか迷っている方がいたら、別に観なくてもいいと思います。漫画と一緒なので。

 

 

 

 

 

 

キングダム 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

キングダム 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 
映画 キングダム 写真集 -THE MAKING-

映画 キングダム 写真集 -THE MAKING-