映画「銀魂2 掟は破るためにある」ネタバレ感想! 前作の雰囲気そのままにグレードアップした良作

 

銀魂 2 掟は破るためにこそある

 

 

はじめに断っておくと、私は福田雄一監督の作風が苦手である。
「勇者ヨシヒコ」シリーズも1話で視聴をやめたし、前作の「銀魂」を劇場で観た時もその出来に愕然とした。これは単純に合う合わないの問題ではあるのだが、「実写化は銀魂が1番! 他はクソ」みたいな言説まで飛び出すようになってしまい、実写化賛成派の私は作品を飛び越えてそのファンすらも憎むようになった。1作目鑑賞当時も、隣に座ってたジャニオタが堂本剛が出る度にキャーキャー喚いていて本当に良い迷惑だったという苦い思い出がある。
そのような様々なノイズのせいで私は「実写銀魂」に好感を持てなかった。ギャグやパロディは確かに面白いけど、アクションやドラマパートは絶望的。CGも監督が敢えてちゃっちく見せているのだが、そういう辺りが私の怒りのツボを猛プッシュする。
作品自体は普通だが、ファンが纏う空気感のせいでイメージがかなりマイナスに寄ってしまった。
しかし、実写化映画の中では類を見ない大ヒット作品であることは間違いない。この規模までくれば観に行かないわけにはいかないだろうと、「銀魂2 掟は破るためにこそある」も鑑賞することにした。原作はしっかり読んでいないため、真選組関連の話は全く知らず、ギャグパートの将軍の話は少し覚えている程度だった。

ここからの内容はネタバレを含みます

 

前作からグレードアップ

「銀魂2 掟は破るためにこそある」、確実に言えることは、前作から遥かにグレードアップしているということ。前作同様、前半はギャグ中心で伏線を張り、後半にドラマパートで畳み掛けるという構成。1作目では原作を知らない観客に向けたためか、各キャラの紹介パートが結構長く、その冗長さをギャグやパロディでカバーしているような感があった。しかし、キャラ紹介がほぼ不要になった2作目は遊び放題。新キャラの伊東と土方の確執を丁寧に描きつつも、同時進行で万事屋サイドがずっとコントをやっているという絶妙なバランスであった。佐藤二朗やムロツヨシの悪ふざけもしっかり挿入され、千年に一度ネタやジプリパロディなど、2作目にして早くも”お馴染みのやつ”感が定着しているのもすごい。
また、前作では退屈すぎて死ぬかと思ったアクションシーンもどうにか観られるものになっている。スローモーションに頼りすぎているという問題はあるが、幼稚なチャンバラをやってギャグパートと判別がつかなかった前作よりは格段にマシであった。

キャストの演技力の高さ

小栗旬がまんま銀さんだったり、中村勘九郎が完全に局長だったりと、銀魂のキャストはハマり役が多いのも特徴。実写化作品において最も懸念される、キャラ解釈の違いを見事に振り切っていくのは素直に凄い。その上、ふんだんに盛り込まれているキャストいじりが”銀魂らしさ”と結びつき絶大な威力を発揮している。
銀魂がすげえのか映画がすげえのかキャストがすげえのか、その全てなのか。とにかく実写化としてかなり再現度が高い作品であることは間違いない。というか銀魂の作風自体、仮に全く原作に寄せてなくてもそれをネタにできる器の広さがある。一言で言うなら、何をしても”銀魂”なのだ。
そんな特殊な作品に、悪役として新たに三浦春馬と窪田正孝が加わる。この2人の演技がもう完璧。私は原作のキャラを知らないのだが、それでも思わず”完璧”という言葉がこぼれてしまう。どちらも知的な悪役という扱いなのだが、三浦春馬は伊東の危うさを見事に演じ切り、窪田正孝は万斉のござる口調を違和感なく押し切った。特に、ヘリコプターから銀時に投げかける言葉の気合の入り方。それまで軽いノリだった万斉のキャラが見事に覆り、激昂する窪田正孝という最強の存在が君臨する。このシーンだけ切り取りたいほど、ベストオブ窪田正孝。
ただ、夏菜のさっちゃんは何で出したのか分からない。まあその不遇なキャラを夏菜が演じているということ自体が既にメタ的に面白いのだけども。

ドラマパートはダメダメ

ここまでは褒めてきたが、当然悪いところもあった。むしろ、悪いとこまでマイナス方向にグレードアップしており、後半1時間はかなり嫌な思いをする羽目になった。
オタクの討論番組がきっかけで、それまでバラバラだった真選組と万事屋の物語が結びつく。トッシーを片っ端からいじり倒した後、伊東の不穏さが更に強調され、彼の目論見が真選組の乗っ取りであることが明らかになる。また、その裏では高杉が暗躍しており、彼の部下の万斉が将軍暗殺を決行しようとしていた。
導入としては非常に流暢なのだが、やはり前作の悪夢のような方向転換を思い出し、覚悟を決めたというのが本音である。原作でも、銀魂のシリアスパートは退屈だという声があるが、そんな弱点まで丁寧に実写化する必要は全くない。
1作目よりはマシだったと思う。1つ1つの展開は燃えるし、それが矢継ぎ早に出てくるとなるとテンションも上がるはず、はずなのだが、やはりテンポが悪い。
近藤の説教→沖田登場→真選組登場→土方復活→銀時VS万斉→伊東の過去→土方と伊東の決着。この怒涛の流れをここまで冗長に演出してしまえるのは最早福田雄一監督の才能でしかない。福田監督の悪いところは、シリアスにも必ずギャグパートのような”タメ”を用いてしまうところにある。例えば土方が刀を抜くシーンなんかは抜けない抜けない〜というタメよりもそれ以前の覚悟が重要になるのであって、単に気合いを入れる時間を長く取ればいいというものではない。こういった悪ふざけのような場面が随所に見て取られ、テンポがごっそりと損なわれる。むしろアクションやドラマパートの演出さえ改善すれば、ギャグがキレッキレの素晴らしい映画になっていたのではないだろうか。

BGM酷すぎ

銀魂の音楽は瀬川英史という方が担当している。この方は福田雄一監督と親交が深いのか、監督の作品のほとんどに音楽担当としてクレジットされているのだが、この銀魂ではそれが裏目に出た形だ。
「デンデンデンデン デンデンデンデッ」という音楽が映画では常に流れていた。いや常には言い過ぎなのだが、とにかく随所で挿入されていた記憶がある。問題なのはギャグでもシリアスでもこのBGMがずーーーーっと流れていたことだ。
音楽は作品のテーマを演出する上で欠かせないものである。映像作品である以上、眼だけでなく耳から来る情報量も相当なものであり、音楽は映画の構成に多大なる影響を及ぼす。しかし、この銀魂では前述の「デンデン〜」がとにかく至る所で挿入されるため、こちらが感情の行き場をなくすという恐ろしい演出がなされていた。この曲、前半では主にギャグパートで挿入され、将軍イジリと音楽の不穏さが相まってよりギャグの精度を高めていたのだが、後半のシリアスなシーンでもこの曲が流れてしまい、「え、ここギャグパートなの?」と混乱してしまうことが多々あった。もちろんこの曲はギャグパートでしか使いませんよなんて言われてるわけではないので、受け手の思い込みが悪いと言われればそれまでなのだが、こちらはもうあの曲=ギャグパートという風に慣らされてるわけだし、ここはどうにかしてほしかった。
1作目でも随所に挿入されていただけに印象の強いこのBGM。使いどころを間違えて映画の演出にまで悪影響を出してしまったのは非常に残念である。これが監督の演出なのかは分からないが…。

まとめ

うだうだ言いながらもギャグパートは楽しく観ることができた。しかし、それ以上を期待するのは良くないな、と。やはり福田監督は映画の特徴であるスクリーンのスケールや2時間という長丁場を全く活かせていないので、このクオリティで30分丸々ギャグのTVドラマになってくれたら嬉しい。
福田雄一監督のノリ全開なのでそこが合わない人は無理かもしれないが、1作目ほどのわざとらしさは感じなかった。好き勝手やってるキャスト陣を見るだけでも十分に元は取れるだろう。
動員も好調のようなので、ぜひ続編やTVドラマ化を期待したい。

 

 

 

 

銀魂

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