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映画『パージ:エクスペリメント』評価・ネタバレ感想! シリーズ史上最高! ひたすらに暴力の嵐

 

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犯罪抑止のため、年に1度、夜12時間だけ殺人を含む全ての犯罪が合法化される”パージ法”が制定されたアメリカを描き、大ヒットしたパージシリーズ。映画だけでなくテレビドラマにもなっており、本作『パージ:エクスペリメント』は映画1作目の更に前、パージ法制定の日に迫る内容になっている。パージの目的が犯罪抑止ではなく、低所得者を殺害する口減らしにあることは過去の映画でも指摘されてきた。パージシリーズはその滅茶苦茶な設定とは裏腹に、しっかりとした社会問題への警鐘を孕んだクレバーな作品なのである。

 

しかし私見としてはその頭の良さが逆に足枷になってしまっていたというか。正直設定から感じる殺伐さよりも内容の小難しさが一番に来るため、客層とミスマッチになっている部分があるのだと思う。また、ゴア描写も社会派な一面も盛り込むことで、逆に中途半端になっている印象さえ受ける。要は、バカ映画になりきれなかったのだ。しかし、事実こうして4作も映画が作られていることから考えるに、やはりその設定が放つ輝きは魅力的なものなのだろう。そして4作目(だが前日譚)にしてようやくパージという理不尽な法律の恐ろしさが前面に押し出され、こちらの感情のツボをうまく押して恐怖を与えてくれる内容になった。

 

犯罪抑止のためにパージ法の導入を検討していたNFFA。そこで心理学者の実験という名目で、ニューヨークのスタテン島にて実験を敢行。参加者には多額の報酬が支払われ、住民たちは金目当てに島に残る。そしてパージの夜。開始当初は破壊行為や騒音が目立つのみで暴力行為は目立たなかったが、突如現れたチンピラ集団がバイクに乗って次々と民家を襲撃。実は、この実験はNFFAがパージ法施行に向けて仕組んだ出来レースだったのだ。次々と殺される住民たち。成す術もないまま死ぬのをま待つだけかと思われたその時、街のギャングが人々を守るために立ち上がる。

 

パージの設定をリアルに考えようということ自体に無理があるのだが、こんな無茶苦茶な法律でもきちんと事前に実験はしていたらしい。本作はアメリカでパージが施行される以前、その導入に向けて試験的に実行された小規模なパージを描いている。前3作で監督を務めたパージの原作者・ジェームズ・デモナコは脚本に回り、今回はジェラード・マクマリーが監督を務めている。この監督交代も過去3作との作風の違いに一役買っていると思われる。

 

上でも少し述べた通り、私の中でのパージシリーズの印象は「少し地味」。

犯罪がごった返す夜を舞台にしていながら、社会問題の視点に重きを置いてしまったがために、どっちつかずな作品になってしまっている。しかし、この『パージ:エクスペリメント』はそんなフラストレーションを見事に吹き飛ばす殺人の嵐。数分に一度人が死に、暴力の止まない地獄絵図。それでいて、政府VS市民というシリーズ通してのテーマに真摯に向き合い、バイオレンスながらクレバーであるという絶妙な塩梅。時には数分の長回しカットで主人公が次々と軍人を倒していくという見ごたえのあるシーンも。

 

また、かねてより私が期待していた「本物の殺人鬼の登場」が遂に実現した。パージシリーズは普段イライラを重ねた人々の憂さ晴らし&それに巻き込まれた人々の夜という一面が強かったが、今作では実験を円滑に進めるために刑務所に収監されていた本物の殺人鬼を一人投入。これがまあとんでもない奴で声はデカいし常に暴言だし坊主だし言葉遣い悪いしの、ザ・悪人。そんな彼が発端となって次々に人が死んでいくのだ。

 

更に主人公のキャラクターも秀逸。ギャングのボスであり、裏切った部下には冷酷な仕打ちも厭わないが、反面非常に仲間思いの一面もあり、部下の死には心を痛め、元カノのピンチには真っ先に駆けつける。ドローンなどの近代兵器で殺戮を続ける政府に対し、銃と鍛え上げた肉体だけで単身挑むその姿は正にヒーロー。政府の脳がイカれてしまったからこそ、街のギャングがアウトローとして人々に拍手を持って迎え入れられるというラストはカタルシス抜群。また、前日譚だからこその、彼の奮闘をもってしてもパージ法施行は避けられなかったという後味の悪い事実が残るのもまたいい。

 

パージシリーズは理屈を変にこねくり回すよりも、キャラクターの魅力で勝負した方が面白くなると前々から思っていたのだが、今回の映画でそれが立証された形だ。イカれた組織にイカれた殺人犯、仲間思いのギャング、あと普通に隠れてるのにやけに声のデカいババアなど。様々な人間模様が乗っかることで世界観をより魅力的に押し広げることができる。また、この映画は前日譚であり、パージ法施行が避けられない事実であると観客が分かっているからこそ、主人公たちの戦いの虚しさが余計に演出される。政府の役人と対峙するようなことすらなく、ただ一夜を逃げ延びるために戦い続けるというだけの内容。暴力性やアクションはシリーズの中でも随一であり、それに伴って政府に対する恐怖も喚起される。

 

公式サイトの批評家コメントではモデルのゆきぽよの「法律最高!!法律大好き!!」という表現が話題になっているが、この意見は非常に的を射ていると思う。「法律が人を守らなくなる」というねじれた社会の恐怖を、シリーズ中最も考えさせてくれるのがこの映画である。

 

 

パージ (字幕版)

パージ (字幕版)

 

 

 

 

 

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