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映画『ジェミニマン』評価・ネタバレ感想! 2人のウィル・スミスが醸し出す日曜洋画劇場感

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「ウィル・スミス VS ウィル・スミス」という心躍る見出しが目を引くが、どうやら興行収入の面では苦戦しているようだ。

CG技術の進歩で同一人物が画面に複数存在することはもはや珍しくはないし、『スター・ウォーズ』なんかでは亡くなった役者を合成で再現していた。そのある種の到達点がこの『ジェミニマン』である。国家直属のアサシンであるヘンリーを襲撃したのは何と若い自分だった、という物語。

 

題材を聞いて思い出したのは『LOOPER』という映画。後に『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』を監督することになるライアン・ジョンソン監督の作品で、未来から送られてくる犯罪者の処刑をしていた主人公の物語。ある日送られてきた犯罪者の正体が未来の自分であると気づいた彼は、逃走する未来の自分と戦うことになる。この映画では現代の主人公をジョセフ・ゴードン=レヴィットが、未来の主人公をブルース・ウィリスが演じていた。

 

LOOPER/ルーパー (字幕版)
 

 

しかし、この『ジェミニマン』ではウィル・スミスが2役を演じている。国防総省を不審に思い真相を追い求めるヘンリーと、それを追う若き暗殺者のジュニア。タイムトラベルものではなく、ヘンリーのクローンによってジュニアが作られたという設定だ。ヘンリーはいつものウィル・スミスだが、ジュニアに関しては合成技術を駆使して20代のウィル・スミスになっている。初夏には『アラジン』で青い魔人・ジーニーに扮していた彼が、またもトリッキーな形で出演するのである。

 

監督は『ブロークバック・マウンテン』と『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』で2度アカデミー監督賞を受賞したアン・リー。本作もハリウッドの作品群にはない、中国人監督ならではの独特な個性が光っている。何より、前半までの画面の明るさに驚かされる。最近の大作映画はやたらと暗い作品が多いのだ。

 

あらすじは非常にシンプル。

新幹線に乗る乗客を2km先から撃ち殺してしまう程の実力を持つヘンリーだったが、友人からの情報で雇い主である国防総省が標的の素性を改竄していたのではないかと疑い始める。その疑惑はすぐに確信へと変わるも、敵もヘンリーの裏切りを把握し、直ちに抹殺に取り掛かる。ヘンリーを監視していたダニー、コロンビアに住むバロンと共に逃亡するヘンリーだったが、彼を追ってきたのは若き頃の自分にそっくりの男だった。

 

その男の名はジュニア。ジェミニの社長に養子として育てられたが、ヘンリーと出会い自分が彼のクローンであることを知る。信頼していた父親ともう一人の自分であるヘンリーの間で揺れる彼は、最終的にヘンリーの側につく。父親に裏切り者と見做されたジュニアは、ヘンリーと共に追われる身となってしまった。

 

SF映画ではクローンが登場することは珍しくない。日本では『デスノート Light up the NEW world』でも夜神月のクローンが登場したほどだ。少し前にアニメが放送されて話題になった『彼方のアストラ』というSF漫画にもクローンが出てくる。現実には倫理的な問題をクリアできない為人間のクローンを生産することは禁止されているものの、フィクションの世界ではもう何度も見た設定である。そのありきたりな題材が、2人のウィル・スミスという出オチで見事に観客を惹きつけるのだから素晴らしい。しかも、剽軽なヘンリーと思春期のような繊細さを持つジュニアの2役をしっかりと演じ分けている。改めてウィル・スミスという名優の一挙手一投足に感動させられる。

 

 

デスノート Light up the NEW world
 

 

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最終的には2人の前に立ちはだかるマスクをした強敵も、ヘンリーのクローンであったことが明かされる。ジェミニ社の目的は、最強の暗殺者であるヘンリーのクローンを大量生産して兵力を賄うことだった。ジェミニ社の社長が言う「家族を持つ兵士よりも、クローンの方が戦争に向いている」という論はなかなか重いテーマなのだが、彼はただの悪役でありそこに信念を持っている役回りではないため、あっさりとヘンリーに殺されてしまう。ここまでクローンを大々的に扱うのであれば彼がもっと奥深い正義感を持っていてもよかったと思う。この映画におけるクローン要素は「2人のウィル・スミス」と「父親に騙されて育ったジュニアの自己喪失」の2つに過ぎなかったのが惜しい。ただ、ジュニアの姿に若い頃の自分を重ね、彼の殺人を止めるヘンリーの姿は見る価値あり。「こんな暮らしをするのは俺1人で十分だ」と言うセリフには思わず胸を締め付けられた。

 

総合的に見ると、どこか物足りない印象。ヘンリーの活躍とジュニアの葛藤のパートが長い為、最終決戦があっさりと終わってしまう。しかもこの映画、何をすれば終わりなのかがはっきりしないまま物語が進んでしまい、いきなり敵が攻撃してきて、その場にいた3人目のヘンリーとジェミニ社社長を殺してハッピーエンドと、かなり強引にエンドロールを迎えてしまう。「あれっ、もう終わり?」と思わず腕時計を確認してしまった。

 

しかしこの"日曜洋画劇場感"とでも言うのか、あまり深く考えず何となく楽しめるという意味では非常によかった。地上波放映だったらなかなか楽しめそうな娯楽映画だ。本国での興行収入は赤字のようで、私が観た劇場でも人影はまばらだったが、どうにか健闘してほしいところ。

 

 

 

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