ミーアキャットスペース

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『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 失われたひろし』感想! 今年もバカみたいに泣ける大傑作!

 

映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン  失われたひろし (双葉社ジュニア文庫)

 

 

毎年恒例の劇場版クレヨンしんちゃん。ここ数年はゼロ年代初頭ほどのカオスさはないものの、家族や友情、夢といった普遍的なテーマを見事に紡いでいるため、ファンからの評価は高い。私自身は原作も読んでおらず、毎週放送されているテレビアニメも滅多に観ないのだが、幼少期に観た『オトナ帝国』が強烈に脳裏に焼き付いているため、しんちゃん映画を鑑賞することがもはや義務化されている。私と同様にしんちゃんを劇場版だけ鑑賞しているという方も多いのではないだろうか。

 

 

 

 

27作目の劇場版『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 失われたひろし』では、タイトル通り野原一家が新婚旅行でオーストラリアへ出かける話。しかし、仮面族という現地の部族にひろしが連れ去られてしまう。そして、財宝を狙うトレジャーハンター達も、カギとなる花婿(ひろし)を手に入れるために仮面族と衝突する。そして、残されたしんのすけやみさえ達もひろしを救うために仮面族の敷地に飛び込んでいく。単純な善悪ものが多かった近年では珍しく、野原一家・トレジャーハンター・仮面族の三つ巴の戦いという構図。正確にはトレジャーハンターは個々で動くキャラクターが何人も登場するのだが、そこまでしっかり立ち位置が分けられているわけではないので、三つ巴という表現が妥当なところだろう。

 

監督は通算4作目の橋本昌和、脚本は通算3作目となるうえのきみこが担当している。近年の映画クレヨンしんちゃんを支えてきた2人の参戦ということで観る前の期待値もかなり高めに設定したのだが、しっかりとそのハードルを越えてくる秀逸な出来。私は昨年に公開された『カンフーボーイズ』が映画クレヨンしんちゃんのベストだと思っているので、2年続けて面白い作品が来るかどうかと懸念した部分もあった。それでも、去年フィーチャーされたカスカベ防衛隊は置き去りに、野原一家を軸にして見事に家族愛・夫婦愛を提示した素晴らしい作品だった。普通に何度か泣いた。泣けるクレしん映画を探しているならこれは絶対に観るべき。

 

 

 

 

実はひろしが連れ去られるのは映画の中でもけっこう後半で、それまではオーストラリアという場所の説明だったり家族間の軋轢だったりが丁寧に描写される。少しスロースターターな感は否めないが、明らかにラストシーンに繋がるんだろうなというあまりにも緻密すぎる御膳立ての一つ一つが既に涙腺を緩めてくる。「金環日食で指輪をはめる」とか「しんのすけとひろしのお約束」とか「全然うまく撮れない家族写真」とか、何気ない新婚旅行の風景が映画を締めくくるラストシーンへの伏線になっていて、それが露骨すぎるがゆえに感極まってしまうというか。もうここまで提示されたらラストシーンは大体予想できるんだけど、その予想通りになったら絶対泣いてしまうというか。もうひろしが連れ去られる前の話だけで感動が約束されてしまう。こういうと意外性のない物語だと批判しているように聞こえるかもしれないが、”感動もの”にしようという露骨な狙い方ではなく、家族の物語をきっちりと描いたうえで泣かされるという結果論的な泣きなので私としては全然アリ。

 

最もよかったのが劇中でひろしが歌う福山雅治の「HELLO」。ひろしとみさえが歌うということは公開日に公式から明らかになっていたのだけど、それが非常に効果的な使われ方をしていた。特にひろし。旅行先でクルーザー入場券を勝ち取ろうと、みさえのいない隙にダンスバトルに参加したひろし(このダンスバトルですら若干泣かせにくるからズルい)だったが、現地の女性に囲まれて踊る姿を見て事情を知らないみさえは激昂。ふてくされたひろしはその場を離れてしまう。一人ビールを飲み愚痴るひろしだったが、胸ポケットから家族写真を取り出すと思わず溢れ出したみさえとの出会いの思い出に感極まり、花束を買ってみさえに謝ろうとダッシュに笑顔で宿へと駆ける。このシーンでひろしが歌う「HELLO」が流れるのだが、もう無敵。走り出したくなる曲ランキングでもかなり上位であろうこの曲とひろしの心情が見事にマッチする。「こ~いっがっ! は~し~り~だ~し~たら~~~~」でもう泣く以外の選択肢は全て消される。

しかし、ここに問題が生じる。同時進行で仮面族達が怪しい動きをしているのだ。ダンスバトルで彼らを姫の花婿だと見初めた彼らは、ひろしを連れ去ろうと動き始めていた。観てるこっちは明らかにひろしがみさえのもとにたどり着けないと分かる。まあ映画クレしんなのでひろしが死ぬわけじゃないことは自明だが、この福山雅治の曲が悲劇で終わることを薄々感じ取ることはできる。こういった”約束された感動”が至る所に配置されていて、こちらの感情を丁寧に誘導してくれる。逆に言えば斬新さはないものの、ここまで王道な感動を提供できるというのは素直にすごいことだと思う。それにしんちゃん映画の客層はファミリー層なのだから、これくらいがちょうどいいのではないか、と。

 

意外性こそ薄いものの、王道かつ堅実な作りでしっかりと泣かせにきてくれる見事な作品であったと思う。去年の『カンフーボーイズ』がかなり捻ったものであったためそういった展開を期待してもいたが、そんなことがどうでもよくなるくらいにとにかく泣かせに来る”泣きの暴力映画”。しかし、トレジャーハンター要素もしっかりと機能しているため、泣きだけでなく笑いもふんだんに盛り込まれている。新たなしんちゃん映画の代表作と言えるのではないだろうか。未見の方はぜひ観てほしい傑作である。

 

 

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