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記憶喪失の男は本当に強盗犯だったのだろうか? 映画『バックトレース』評価・ネタバレ感想!

バックトレース(字幕版)

 

 

シルベスター・スタローンの新作は記憶を失った強盗が脱獄し、真実を追う物語。宣伝ではやけにスタローンがプッシュされているが、実際にはあまり出番はなく、だが逆にそのくらいがカッコいいという絶妙に美味しい立ち位置になっている。スタローンなしでも、100分足らずでテンポよく明かされる強盗事件の真相が心地いい快作だ。

 

以下ネタバレ込みであらすじを。

 

7年前、2000万ドルが奪われる強盗事件の唯一の生き残りとして逮捕されたマクドナルド。彼は撃たれたことにより記憶を失っており、その他に関わった人物はみな絶命しているため、事件の真相を知る者はおらず、金の行方すらも誰にも分からなかった。そんな彼の元に、刑期満了直前の男が脱獄を持ちかける。その策にのり見事刑務所を抜け出した彼は、刑務所にいた男、女医として潜入していた女性、彼らの仲間の男の3人と共に行動し、真実を追うことになる。

 

女医たちが実験を重ねて出来上がった記憶を元に戻す薬の効果で、事件の舞台へと足を踏み入れる度に少しずつ過去の出来事を思い出すマクドナルド。金を隠した場所を突き止め、ついに金を見つけ出すが、そこには警官が近づいていた。そしてマクドナルドは思い出す。事件に警察の人間が1人協力しており、彼の裏切りによって仲間たちが殺されたことを。脱獄させてくれた彼らが、自分の家族だったことを。家族を人質に取られ、絶体絶命のピンチに陥った彼の元にスタローンが現れ、悪徳警官を射殺する。スタローンは事件を不審に思っており、悪徳警官をマークしていたのだ。スタローンは警察に口を利かせてマクドナルドを死んだことにする。2000万ドルと共に、彼は家族と共に幸せな暮らしを送るのだった。

 

スタローンは現場に出ず(というか悪徳警官のせいで下手に動けない)、最後にいいところを掻っ攫ってシルベスター・スタローンという配役なしでは絶対成立しえないキャラクターを見事に演じている。スタローン故の安心感というか、彼なら真相を突き止めてくれるという絶大な信頼がある。実際真相にたどり着いてマクドナルドの死を偽装し、彼らの手助けをしてくれるという非常に美味しいポジションで、スタローンという配役ありきの懐の深いキャラクターだ。

 

この映画の面白いところはやはり徐々にマクドナルドの記憶が戻り、真相に近づいていく点だろう。そのキッカケが妻が独自に開発した記憶を元に戻す薬というのがイマイチ納得がいかないが、それほど夫との生活を取り戻すことに必死だったのだろう。結果的にマクドナルドは強盗事件に関わってはいたものの、殺人には関与しておらず、2000万ドルを奪おうとした悪徳警官に騙されて仲間を失ってしまい、挙句に記憶まで失くして家族のことすら忘れてしまうという悲劇的な男であった。この哀しい境遇と悲哀の込もった表情や立ち振る舞いから、切なく感じずにはいられない彼の視点を追うごとに物語に引き込まれているという見事な映画。100分未満で観られるため、気軽にサスペンスものを楽しむことができる。

 

ただ逆に言えばあまり目立つような作品ではないというか、かなり地味な映画になってしまっている。確かに宣伝ではシルベスター・スタローンの登場を推すしかないよなというか、スタローンがいなかったら魅力は半減していたなと考えてしまう作品。犯人のオチも簡単に読めてしまうし、マクドナルドが脱獄犯のはずなのに逃亡劇的な緊迫感に欠ける(一人の警官に怪しまれるくらい)のも残念。事件の真相も驚くようなものではなく、消去法で辿り着いてしまうほどの陳腐なもの。引き込まれはするものの、斬新さにはイマイチ欠ける。

 

ただ、マクドナルドが脱獄に協力した彼らが家族であったことに気づき、自分が強盗事件を起こしたのも家族のためだったと思い出すシーンは非常に良い。愛する夫(父親)を救うために家族が一丸となって真実に迫るというカラクリが後出しで明かされるという展開は込み上げるものがある。さらりと心を打たれてしまうという意味でも退屈しない映画だった。

 

 

バックトレース(字幕版)

バックトレース(字幕版)