前作との差別化はバッチリ 映画『ヘルボーイ』評価・ネタバレ感想!

ヘルボーイ:百鬼夜行

 

1994年にアメリカのダークホースコミックスから刊行されたマイク・ミニョーラの作品、『ヘルボーイ』はこれまでに2度映画化されている。1作目は2004年の『ヘルボーイ』。後に『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞を受賞することになるギレルモ・デル・トロが監督を務め、その独創的なデザインや演出、そしてコミックらしいアクションと繊細なラブストーリーが評判となり、大ヒット。2008年に2作目の『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』が公開された。こちらも1作目の正統続編とあってアクションやCGのクオリティも高まり非常に面白い1作。1作目で完結したと思われたヘルボーイと恋人リズの仲が再び描かれる。思えば我々は『ヘルボーイ』にはラブストーリーが付き物だとそう思わされていたのである。

 

しかし、今回公開されたリブート版『ヘルボーイ』は恋愛など見向きもしない。初のR指定&原作の忠実な映画化を目指した本作はバイオレンスアクションの連続。次々と人が死んでいく血も涙もないゴア映画。ヘルボーイは自分が人間でない上に世界に終わりを齎すものであることに悩みはするものの、前作のような恋愛にくよくよするシーンは全くなし。そう、あの恋愛要素はギレルモ・デル・トロの優しさが付け加えたオリジナリティだったのである。

 

今作は『ヘルボーイ:百鬼夜行』に収録された原作を元に作られている。そのせいか、映画というよりもアメコミ的な流れで物語が展開し、説明もそこそこに新キャラや新要素が登場したりする。物語には緩急がなく、とにかく2時間ノンストップ。ホラーかアクションか苦悩か、大体この3パターンである。そういう意味では不親切な映画なのかもしれない。1作目なのにも関わらず、主人公と受け手の間に情報量の差があるため、何も知らずに観ると「あれ? これって1作目?」と思ってしまう可能性すらある。それくらい矢継ぎ早に展開が進んでいく。だが、逆に言えばそれは物語がそれ相応の深味をもっているということ。そもそもコミックで登場して20年以上が経ち、2度も映画化されているのならこういった容赦のない作品もアリだろう。同じアメコミ映画でもMCUなんかは映画独自の世界観を確立するために各キャラのオリジンを丁寧に描くが、ヘルボーイは細かいことなど気にしない。その粗暴さは他のアメコミ映画と、そして過去2作との差別化という意味において成功を収めている。

 

物語は端的に言えばヘルボーイとその仲間たちが魔女ニムエと戦う物語。6世紀、アーサー王と魔術師マーリンによって体をバラバラにされそれぞれ別の場所で保管されたニムエが復活し、人間を絶滅させようと企む。それを止めるヘルボーイ達という構図である。非常に分かりやすいバトルものの構図ながら、そこにアクセントをつけるのはヘルボーイが自分が世界を終わらせるものとして生まれたことに苦悩するというキャラクターであること。これはギレルモ・デル・トロ版でも描かれていたが、今回も角が本来の長さまで伸びた暴走バージョンが登場する。あの体躯なのにやはりヘルボーイの精神はナイーブなのである。更に悪役ニムエを演じるのがミラ・ジョヴォヴィッチであることにも注目したい。『バイオハザード』シリーズで有名な彼女だが、来年公開の『モンスターハンター』実写化にも出演することが決まっている。ゲームやアメコミの実写化にここまで積極的に出演してくれるというのは非常に嬉しいし、その中で抜群の存在感を発揮して映画の面白さを高めてくれるのだから最早言うことはない。ただ、病原菌をまき散らす最強の魔女だったはずなのにアッサリとやられてしまったのは勿体なかった。

 

今回はヒョウに変身する男と降霊術を持つ少女を仲間にして、ヘルボーイが敵と戦うのだが、そのCGや怪物のデザインがどれも見事。前作までのギレルモ・デル・トロ感とはまた異なるグロテスク一直線のデザインが心を刺激してくれる。そんな怪物たちがヘルボーイによってばったばったと血を噴き出しながら薙ぎ倒されていくのだ。前作よりも痛快娯楽作という意味では明らかにグレードアップしている。ただ、1作目っぽくなさと緩急のない展開のせいで頭がこんがらがってしまうのが勿体ない。演出はよかっただけに(特に音楽がサイコー)、脚本をもっと1本の映画向きに作っていれば傑作になっていただろう。明らかに次回作やる気満々のラストはちょっと萎えてしまった。その直前の3人の長回しアクションが最高だっただけに…。

 

ストーリーを楽しみたい人にはギレルモ・デル・トロ版、ゴア描写を見たい人にはリブート版というように前作の焼き増しではなく、きちんと住み分けができているのは素直に嬉しい。これでもっと物語を丁寧に作ってくれたらなあと、そこだけが残念である。

 

 

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