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TRIGGER新作、アニメ映画『プロメア』ネタバレ感想! 監督・脚本の黄金タッグと豪華声優陣による超王道ムービー!

 

「プロメア」オリジナルサウンドトラック

 

『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』の今石監督・中島脚本タッグが送るTRIGGER新作は、前2作と異なり劇場アニメ。グレンラガンとキルラキルは、2クールとは思えない急展開や熱量が話題を呼び、今でも熱狂的なファンを持つが、今回の『プロメア』は2時間という制約がある。しかし、よくよく考えれば脚本の中島かずきは劇作家なわけで、2時間という制約はむしろ彼の本領を発揮させる形となった。そして、その脚本を鮮やかな色彩で見事に演出してしまう今石監督。期待通り、ただひたすらにお二人の才能とTRIGGERというブランドに平伏すだけの非常に幸福な時間であった。

 

おそらく、『プロメア』を観る多くの人は『天元突破グレンラガン』か『キルラキル』もしくはその両方を通ってきた方々なのだと思う。事実、劇場にもそういったファン層の方々ばかりが座っていた。今石・中島タッグと聞けば、アニメ好きにとって黄金コンビみたいなもので、期待以上のものをしっかりと提供してくれる上に、深く考えすぎずこちらの予想の何倍も先を行く展開を見せてくれる。時として狂気と思えるセリフや展開すらも、勢いと熱量で呑み込んでしまうという脅威のタッグなのだ。特に、『キルラキル』で、衣服の正体が実は宇宙人だなんて突飛な設定に、しっかりと理屈を持ってくるあたり、狂っているのかマトモなのか判断がつかない。

 

そして、この『プロメア』にもファンお馴染みの急展開と熱量がふんだんに盛り込まれている。それは、メインテーマに「炎」を持ってくるという直球さからもうかがえるだろう。突然体から炎を自在に操れるようになったバーニッシュという突然変異種の存在によって、世界は大きく変わる。バーニッシュの出現から30年が経過し、彼らを駆逐しようとする人間に対抗する勢力「マッド・バーニッシュ」が猛威を振るっていた。対バーニッシュ用の高機動救命消防隊「バーニングレスキュー」の新人・ガロが「マッド・バーニッシュ」のリーダー・リオと出会い、彼らの心に変化が訪れる。そして、二人は人類の存続を決めるある計画へと関わっていく。

 

炎を操れる人間というTRIGGER持ち味の熱さを率直に出してきたような設定だが、そのバーニッシュと呼ばれる人々は、普通の人間から忌み嫌われている。主人公はバーニッシュの対抗勢力として政府が作った「バーニングレスキュー」の新人・ガロだ。かつて、舞台となるプロメポリスの司政官であるクレイに助けられたことから、彼に少しでも近づこうと入隊。そして前線に赴くまでに成長する。見た目がどう見ても『天元突破グレンラガン』のカミナにしか見えないことは置いといても、かなり熱い男。中身もカミナなのだ。実は『プロメア』には、グレンラガンやキルラキルで重要なキャラクターを担った声優たちが多く出演しており、この2作のファンなら見た目だけで大体の性格を把握できるというほどにキャラクター像が似通っている。内輪と言ってしまえばそれまでだが、これは嬉しいファンサービスでもある。

 

物語は完全なる王道。2時間という尺にこれでもかとエンターテインメント性が流し込まれ、こちらの脳を常に刺激し続けるジェットコースター麻薬ムービー。そんな王道な物語が”ありがち”になっていないのは、作りこまれた世界観と魅力的なキャラクターもあるが、最も強い要因は独特な色彩だろう。

 

「プロメア」オリジナルサウンドトラック

「プロメア」オリジナルサウンドトラック

 

 

ポスターやティザービジュアルからも分かる通り、この映画の色彩はかなり特徴的で、何もかもがビビッドカラーなのだ。物語の鍵を握る「炎」ですらもピンクとグリーンによって描かれている。アニメファンにとっても斬新で、一般層からは下手をすればとっつきにくくなるような印象を与えるこの抽象的な色彩。しかしこれこそ、今石監督とキャラクターデザインを担ったコヤマシゲト氏のこだわりだという。インタビューによると、決してマトモな色を使わない演出のせいで、劇中における”正しい色味”を把握している者がほとんどおらず、誰もがミスに気づかないという苦労もあったそうだ。そうまでして徹底的にこだわったこの色彩、確かに最初は慣れないものの、物語の熱量がその違和感を上回り、30分もすればいつの間にか目に馴染んでくる。それどころか、中盤以降のロボット対決において、この色遣いが重要な意味を持ってくるのだから素晴らしい。主人公サイドの黒と敵サイドの白というコントラストは『キルラキル』にも通じるものがある。おまけに最後はドリルまで登場するのだ。今石・中島タッグがいかにこの映画で好き勝手やってくれたかというのが伝わってくる。そして、その盛り上がりは各作品を楽しんできたこちらの熱狂でもあるのだ。

 

欲を言えば、もう少し物語を捻ってくれればなという思いはある。贅沢な悩みなのは承知の上だが、クレイが実は悪者という展開は予告を観た時点で誰もが気づくことであるし、ガロとリオのタッグというのもファンにとっては予想のつく展開だ。さすがに炎の正体が異次元の生命体という設定までは予想できなかったが(このような宇宙人・異次元関連のぶっ飛び設定も中島脚本ではお馴染み)、王道だけでなくもう少し突っ込んだ内容にしてもよかったのではないかなとは思ってしまう。特に中盤、バトルが少し冗長にも感じてしまった。

 

ただ、劇場アニメであり、初めてこのタッグやTRIGGER作品に触れる人のことを考えると、これくらいの王道路線がちょうどいいのかな、とも。ただ『天元突破グレンラガン』と『キルラキル』がどちらも王道から一歩はみ出た後に再び王道に戻すことで、熱量を演出していたせいもあって、若干の物足りなさを感じてしまったのも事実。まあ王道をしっかりと積み重ねてくれるだけでこちらとしてはもう十分なのだけれど。やはりちょっとだけハッとする瞬間があってもよかったのではないかなーと。

 

また、本作はキャラクターものとしても非常に出来が良い。火消しに心を燃やす(この言葉遊びも楽しい)ガロと、バーニッシュの境遇に違和感を覚えリーダーとして仲間のために前線で戦い続けるリオ。そして堺雅人ボイスで冷酷な言葉を放つクレイ。三者三様の人間模様がしっかりと描かれており、作りがシンプルなこともあって、非常に心に入りやすいキャラクターになっている。特に中盤以降のバトルシーン。「〇〇がねえとやる気が出ねえ」というガロのワガママに対し、次々と炎で具現化してくれるリオくんのナイスプレイには思わず微笑んでしまう。また、彼ら以外のキャラクターも非常にバリエーションに富んでおり、特にレスキュー隊の面々が序盤と終盤だけの活躍なのにも関わらず、とても好感が持てるキャラクターに仕上がっていた。まだガロが来る前の彼らの活躍をスピンオフで作ってくれたりしないだろうか……。

 

ファンも新規も納得の王道物語を独特な色彩で表現するという試みは、見事成功したのではないだろうか。せっかくなら(続編はできそうにないので)前日譚やスピンオフをぜひシリーズ化してほしいところ。だが、バーニッシュは悪人ではないという物語の構造上それも難しいのだろうか……。いずれにせよ、この映画1作だけというのは惜しいので、コミカライズなど他の展開があればと思う。

 

 

 

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