ミーアキャットスペース

主に映画、ドラマ、漫画などエンタメの感想・考察をだらだら書きます。

『仮面ライダーゼロワン』感想① 第1話~第16話

 

年末に映画が公開されるということで、もう3周目くらいですが『仮面ライダーゼロワン』を観ています。令和ライダー1号は人工知能がモチーフと大々的に宣伝された作品ですが、世間の評価は物語が進むにつれて下がっていき、途中で視聴を打ち切った方も多いようです。私はなんとか最終回まで鑑賞しましたが、確かに後半は何とも言えない展開のオンパレードで、「コロナの影響」と看過できないレベルの期待外れなエピソードが多く、勿体ない印象でした。でもせっかく観たならやっぱり感想を残しておこうと、一先ずクリスマス回までの第1話~第16話について思ったままに書いていこうと思います。この辺りまでは劇的に面白いとはいかないまでも、AIと人間の関係性や各キャラクターの価値観などが丁寧に描写されていてよかったです。この頃までは。

 

 

 

個性豊かなキャラクターたち

多人数ライダーと明言はされませんでしたが、序盤から5人は明らかに多人数だと私は思います。更に『ゼロワン』が特徴的なのは3つの組織が存在すること。飛電、エイムズ、滅亡迅雷。言うまでもなく、ゼロワンは飛電に、バルカンとバルキリーはエイムズに、滅と迅は滅亡迅雷に属しています。要するに、5人ライダー三つ巴というのが『仮面ライダーゼロワン』第1部の構図です。しかし、各組織も一枚岩というわけではなく。この人間模様の変化による共闘や対立が物語に深みを持たせていました。

 

1人ずつ簡単に説明を。

飛電インテリジェンスの社長に任命され、仮面ライダーゼロワンとして戦うことになったのが或人。父親代わりのヒューマギアに命を救われた経験から、ヒューマギアは人類の希望・夢のマシンだという信念の下に戦っています。よく勘違いされているのですが、或人は決してヒューマギアを人間と同等の生き物として扱っているわけではなく、あくまで人類の生活を豊かにする夢のマシンという考えに留まっています。大切にしているし「壊れてもバックアップがあるもんな」とドライに考えてもいないけど、人間と混同しているわけではないという絶妙な距離感。この考え方は、現実世界での人間とAIの関係性において最も正しいと言えます。さすが主人公。

ただ、お笑い芸人が第1話で突然社長になる展開はもっとじっくりやってもよかったんじゃないかなと思いました。笑いを取ることを夢見ていた彼が、人を救うことで人々に笑顔を取り戻すという別の道を発見する展開は好きですが、たった1話で消化してしまうのは少し勿体なかった気もします。

 

次にエイムズの不破諌。馬鹿力で無理矢理プログライズキーをこじ開ける仮面ライダーバルカンの変身者。ヒューマギアへの考えは或人とは真逆で、全てのヒューマギアをぶっ潰すことを使命としています。その理由は12年前のデイブレイクの日、当時中学生だった彼がデイブレイクタウンで暴走したヒューマギアに襲われたという悍ましい過去にあります。笑いではなく怒りの感情で戦い続けるところがいいです。ドクター・オミゴトに救われたことで徐々にヒューマギアへの態度が軟化していき、ヒューマギアに殺されかけた&救われた男として複雑な人生を歩んでいきます。

不破さんはかなり好きなキャラクターです。ただ、ヒューマギアを憎むにしては過去が弱すぎる。確かに中学生の時に大量の暴走AIに襲われたらそりゃあトラウマにもなると思うんですが、だからって全部ぶっ潰すとなるかな、と。この辺りは後半でとんでもない事実が明らかになるのですが、ここでは敢えて触れません。ただ、放送当時から「不破がヒューマギアを嫌う理由が微妙なんだよな」とずっと思ってはいました。怒りっぽいけど仁義を通したりするところは好きだし、或人へのカウンターとしてもよく動いてくれたキャラクターなので、ちょっと複雑でした。

 

次にエイムズ技術顧問の刃唯阿。技術顧問でありながら仮面ライダーバルキリーに変身。序盤から女性ライダーを投入してくるあたり、時代を感じます。パワーでごり押しタイプのバルカンとは異なり、スピードや飛行能力を使って華麗に敵を倒す姿がかっこよかったです。ライトニングホーネットは特にいい。しかし、唯阿自身はエイムズに出向しているだけで本当はZAIAの人間。社長の垓に命じられ、飛電を陥れるような動きを見せます。滅亡迅雷を止めるという目的があるため、或人や不破と共闘することもありますが、この時点ではまだ謎多き女という印象で、そのミステリアスさが魅力につながっています。あと、不破さんとの掛け合いもいい。

ヒューマギアに対しては或人とも不破とも違い、あくまで人間の道具という考え方。道具は使いようだと言い放ち、バックアップがあるのだからいくらでも作り直せるというちょっと冷酷な一面も見せます。この三者三様のヒューマギアへの価値観が提示される第3話までの展開、『エグゼイド』序盤の4人ライダーの価値観の擦り合わせの構図と同じで、ぞくぞくしたのを覚えています。

 

滅亡迅雷の滅。デイブレイクタウンの生き残りで、滅亡迅雷の司令塔。圧倒的な強さを誇る仮面ライダー滅に変身します。序盤はパソコンの前でカタカタやっているだけのイケメンでしたが、変身してからの彼はとてつもなく強い。さすが高岩さん。「アークの意志のままに」が口癖で、迅に命じて次々とヒューマギアを暴走させ、人類を滅亡させることが目的。彼も口数が少ない上に感情の起伏が少ない方だったので、ミステリアスな印象を醸し出していました。

 

次に迅。滅の言う通りに動く、作品随一の高身長な割に無邪気なヒューマギア。フライングファルコンを奪ったことで遂に仮面ライダー迅に変身。この頃のテンションは『エグゼイド』のパラドを連想させます。無邪気だけど残忍な性格で、変なファンが付きそうだなと心配していましたが、「父親だ」という滅の言葉に違和感を持ちつつも滅を慕う姿に心を打たれました。あまり好きなキャラクターではないのですが、この第1部で最も変わったのは彼だと思います。暗殺ちゃんと一緒に行動しているときが一番生き生きとしていてよかったです。

 

最後に雷。宇宙野郎雷電として飛電インテリジェンスに潜入していましたが、その正体は自覚がないながら滅亡迅雷の一人。序盤から登場したわけではないですが、一応仮面ライダーなので書いておきます。たった1話のゲストキャラに留まってしまったのが残念(まあ後半で……)。まさか30分の間に登場と正体発覚と変身と撃破、全てをやりきってしまうとは思ってもいませんでした。しかも「飛電に裏切り者がいるぞ!」という流れでぽっと出のキャラクターをその犯人にされても……。

 

イズなんかは一先ず置いといて。ライダー6人三つ巴の構図が非常に楽しい作品でした。一話完結ながら縦軸もしっかりとしていて、ZAIAの社長など、今後の展開に繋がる要素もしっかりと盛り込まれています。キャラクター個人だけでなく、その掛け合いも意味合いの強いものや見ていて楽しいものが多く、さすが高橋脚本だなと思います。勿論サブライターの方々も良かったです。

 

 

物語について

ゼロワン第1部は「お仕事編」でもあるため、特定の仕事に特化したヒューマギアを毎週紹介しつつ、それを用いる人間の感情や互いの交流などを描いていました。そのトップバッターに寿司職人を選ぶ辺りが正にゼロワンらしいです。第3話は未だにお気に入りの回。

販促もしつつ、世界観もキャラクターも確立してと、なかなか大変だったと思うのですが、ライターがバラバラにも関わらず、この辺りはとても楽しめました。中でも好きなのは三条脚本の探偵ヒューマギア回。イズの兄を名乗る個性の強いワズ・ナゾートクが登場し、倒しても倒しても復活する暗殺ヒューマギアの正体を探る前後編です。久々の三条脚本ライダーという期待もあったし、その期待を裏切らない見事な構成で素晴らしい回でした。唯阿の行動によって飛電インテリジェンスが疑われ、エイムズまでもが飛電の敵に回る展開から、ワズの独特な推理によって結論が導き出される展開。そして、実に三条脚本らしい設定が複雑&アツいシャイニングホッパーの初登場。ワズはヒューマギアの中で一番好きなキャラクターなのでもっと長く出てもよかったんじゃないかなと思います。たった2話で自分の身を犠牲にするには余りに積み重ねが少ない。いくらキャラが強くても、さすがに彼の犠牲で感動しろというのは無理です。その分、社長秘書という職業をイズが見つめなおす展開が良かったなと思います。

 

全体的には、或人がヒューマギアを夢のマシンだと説くのに対し、実際にはヒューマギアの暴走が各地で多発しているという皮肉な展開が続くことになります。それは滅亡迅雷の仕業であり、12年前のデイブレイクも彼らによるものだと序盤で明かされるのですが、滅亡迅雷が悪役を一手に引き受ける構図が17話以降の辛い展開にも繋がっていて……。

人工知能が人間の仕事を奪うのではないか、反逆して人類に反旗を翻すのではないかとはよく現代社会でも問題にされていて。さすがに後者は映画の影響を受けすぎだと思いますが、前者に関しては人工知能の発展により不要になる職業も出てくると聞きます。ただ、ゼロワンは第16話の時点では意図的なのかそこには触れておらず、或人の言う「夢のマシン」として人間の生活や仕事をサポートするマシンという立ち位置に留まっています。これを「後半に酷い展開がくる」と期待するか「ぬるい展開だな」ととるかはそれぞれです。しかし、熱血教師ヒューマギアの回で、ヒューマギアがシンギュラリティに達していることが明らかになり、自分の意思で行動するヒューマギアという概念が登場します。不破はこれを危険だとしますが、或人はそれでも守る。滅亡迅雷はそのシンギュラリティに達したヒューマギアこそ、仲間だと信じて強制的に暴走させる。その構図を俯瞰する唯阿。

そして、迅もシンギュラリティに達することで、滅の言うことに逆らうようになります。滅に命を救われたことで迅は完全に覚醒し、ゼロワンと戦いますが結果は敗北。これにて、人類と滅亡迅雷の戦いの幕は下ろされました。

 

結局のところ、人工知能とうまく付き合っていこうという落としどころなのですが、それを許さないという対立概念と、人間を滅亡させるという暴走ヒューマギアによって或人の夢が邪魔されていきます。AIモチーフの仮面ライダーということで、やはり結末は「ヒューマギアとの付き合い方」に終始していましたが、その過程で不破さんや滅亡迅雷の考えをうまくラストに持っていけていなかったなと。逆にここさえうまくやれば、もっと評価は上がっていたかもしれません。作品全体の感想になってしまいましたが……。

 

 

 

残念な点

ここまで基本的に第16話まではよかったよね~という体で話を進めてきましたが、もちろん不満なり残念に思うところもあります。

 

まずは、世界観の確立。これ、最終回まで観ても未だに微妙なのですが、結局ヒューマギアというものが作中の世界で人々にどう扱われているかがよく分からないんですよね。飛電インテリジェンスが製作した人型の人工知能という点だけが取り沙汰されていて、それを世間がどう思っているかという奥行きがまるで足りていません。あらゆる職場で用いられているので一定の需要はあると思うのですが、人間の生活にどれほど根差しているのかという描写が圧倒的に少ない。この辺りはニチアサでSFをやるという難しさとも関係しているのだと思います。基本的に平成ライダーもSFは避けていて、あくまで人知れず戦う存在であったりと、この現実世界でもどこかで仮面ライダーが戦っているかもしれないという絶妙な距離感でした。そのせいか、ヒューマギアが人間の生活を支えている世界観というのが中途半端な出来になってしまったような気がします。『カブト』の渋谷隕石や『ビルド』のスカイウォールはまだ現実世界に近い作風でしたが、ヒューマギアとまでなると、もっと作り込みが必要だったのではと思います。

 

次に、或人の立ち位置である「社長」の描写が少ないこと。様々な職業を描いていくのが『ゼロワン』であるはずなのに、肝心の主人公の仕事がなんとも微妙。確かに突然任命されただけの10代の青年が社長らしいことをできるはずはないのですが、見かけだけでも作り込んでほしかったなという思いはあります。秘書がいて、商品であるヒューマギアと積極的に接して、という優しさは分かるのですが、社長ってそうじゃないだろ、と。これなら一社員でも全く問題ないんですよね。祖父を殺さずとも、祖父に命令されて無理矢理新入社員として入社させられて、サポートのためにイズと行動を共にしてという流れでも全然イケてしまう。社長になったからには商品や社員や顧客に対して責任感を持つべきだと思うのですが、或人はとにかくヒューマギア一筋。それでいて、警察やエイムズの調査にも真摯に立ち向かわず逃げ出したり時間稼ぎをしてしまう。これは個人の職業観に依るところも大きいのですが、私的には責任感が薄いように思えて仕方がありませんでした。あと、普通に社員の描写がないので飛電インテリジェンスの規模もよく分かりません。営業なり商品開発部なり技術部なり、出そうと思えばモブでも出せたと思うのですが……。

 

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最後に

今回はここまでにしようと思います。第1話~第16話、総評するとやっぱり5人ライダー三つ巴のわちゃわちゃした感じが凄くよかったです。しかもどのライダーも素直にかっこいいデザイン。人工知能や社長という点に関してはちょっと詰めが甘い気もしますが、そこはニチアサを何年も観てきた人間なので許せない範囲ではないです。各々の価値観の擦り合わせや今後を示唆する展開の連続で、なかなか楽しんで観ていました。そして、年が明けてこれからだよなあという時期にお仕事五番勝負が始まってしまうのですが、それについてはまた次回に書こうと思います。

 

 

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