ミーアキャットスペース

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『仮面ライダージオウ スピンオフ RIDER TIME 仮面ライダー龍騎』 感想! 致死量の井上敏樹を浴びて……

 

仮面ライダージオウ DX龍騎ライドウォッチ

 

全3話というスピード感で見事に押し切った『仮面ライダージオウ スピンオフ RIDER TIME 龍騎』。龍騎放送当時5歳だった自分は世代ど真ん中。当時アドベントカードもかなりの枚数を集めたし、それらはCSMのVバックルを購入した今でも大切に手元に残している。そんな私も今では社会人になったわけだが、その成長過程で何度龍騎を鑑賞しただろうか。真司の優しさに憧れ、浅倉の恐ろしさに怯え、無情なライダーバトルの結果に涙する。『仮面ライダー龍騎』は、多くの人々を魅了する平成仮面ライダーシリーズの中でも、とりわけ再鑑賞の魅力に富んだ作品だと思う。

 

 

仮面ライダージオウ DX龍騎ライドウォッチ

仮面ライダージオウ DX龍騎ライドウォッチ

 

 

 

放送中の『仮面ライダージオウ』で真司と大久保編集長が本人出演。しかもそれまでの主役アナザーライダーとは違い、アナザーリュウガが登場。劇場版の展開をなぞりつつ、当時まんまの真司と編集長のやりとりに感動させられた。それだけでも感無量だというのに、なんとジオウのスピンオフとして龍騎当時のキャストを揃えて事実上の続編を作るという大盤振る舞い。いくら平成ライダー20周年といえど、ここまで楽しんでよいのだろうかと不安になる。何より怖かったのは『龍騎』本編と遜色ないほどの作品を今の時代にスピンオフという枠で作れるのか、ということだった。『龍騎』自体も物語として綺麗に完結しているし、神崎士郎と由依のわだかまりが解消されたことで、最早ライダーバトルの必要性はない。『龍騎』が大好きだからこそ安易に続編などと謳ってほしくない、しかし当時のキャストが揃うというのなら全く別の物語だとしても観たい、そんな二律背反を抱えつついざ鑑賞してみると、想像以上に井上敏樹節が炸裂した強烈な物語になっていた。

 

龍騎の続編でもあり外伝でもありジオウのスピンオフとしてもしっかり機能している流石の出来栄え。ライダーバトルという『龍騎』最大の特徴を見事に換骨奪胎し、作品自体が「アナザー仮面ライダー龍騎」ともとれる仕様に。当時のBGMやエフェクトをふんだんに盛り込み、原作を知る人こそ驚くような内容になっていて逆に言えば初見はお断りというほどに『龍騎』を意識した作り。

 

 

第50話

第50話

 

 

 

まず最初の感動が設定の巧さ。ライダーバトルを始めたのは神崎士郎ではなく、アナザー龍騎となった加納という男の恋人であった。大切な人を取り戻すために加納が次々と人を襲う姿は、由依にも消えてほしくないが戦いも止めたいという二律背反の中で最期まで悩み続けた城戸真司のアナザーそのもの。神崎士郎の役割は生死の境をさまよっている加納の恋人が担っており、龍騎が全50話をかけて導き出したラストを無下にしないよう配慮がされている。そんな舞台設定で、当時の記憶をなくした真司たちが再びライダーバトルに身を投じることになる。

やはり嬉しいのが当時のキャストが6人も出演しているという点。真司、蓮、浅倉、手塚辺りはCSM版のVバックルにも音声が収録されていたため予想の範囲だったが、まさか吾郎ちゃんと芝浦が登場するとは。吾郎ちゃんがゾルダというのは北岡役の小田井涼平さんが純烈の活動で忙しいという点も考慮されているのだろうが、最後まで北岡を慕い続けた彼が遂にゾルダとしてライダーバトルに身を投じるというのも面白い仕掛け。そして、浅倉を北岡と間違えてしまうという不気味なキャラクターに仕上がっている点もナイス。更に仮面ライダーガイ=芝浦の登場。テレビ本編では無垢な残忍さが強調され、自ら御膳立てたライダーバトルの最中に王蛇の盾にされてしまうという悲惨な末路をたどった彼が、今回重要な人物として登場する。

また、それ以外のキャストは舞台俳優などから選出されているようで。大した活躍は見られなかったのだけど、龍騎のライダーバトルのシステム上、過去に神崎士郎によってライダーに選ばれた人間とも考えられるようになっていて、いろいろと妄想が捗る。

 

BGMやアクションも見ごたえバッチリ。印象的な音楽の数々が当時の雰囲気を醸し出し、現代風にブラッシュアップされたファイナルベントが物語を彩る。ジオウ本編がライダーの歴史を消滅させていく物語のため、スピンオフという形でこういったリブートが堪能できるのも嬉しい。また、真司が鏡の中の真司に取り込まれリュウガに変身するなど、劇場版『EPISODE FINAL』を思わせる作品にもなっている。

 

 

 

 

ストーリーに関して言えば、さすが初期平成ライダーを支えてきた井上敏樹。圧巻の一言である。おそらくここで過去作品のテーマをうまく汲み取る毛利さんやジオウ本編のメインライターである下山さんを起用するという選択肢もあっただろうが、敢えて井上敏樹を投入したことに拍手を送りたい。もともと龍騎は小林靖子の代表作として名前が挙げられることが多いのだが、実際には小林脚本と井上脚本の競り合いが生んだ相乗効果が一番の魅力である。おそらく小林脚本だけではあそこまでの人気作にはならなかっただろう。これに関しては、小林靖子自身がインタビューで「5話6話が全然書けなかったために次の回から井上が導入された」という旨の話をしている。結果的にこれが数々の印象的な名シーンや名言を生み出す結果となった。終盤、龍騎の永遠のテーマである正義の所在に関して、真司を軸に1つのアンサーを提示したのは小林靖子であったが、もし井上敏樹が最終話の脚本を担当していたらまた違った終わり方になっていたのではないだろうか。

 

そして、この『RIDER TIME 龍騎』こそ、井上敏樹流の『仮面ライダー龍騎』最終回だと私は思う。物語の整合性よりもとにかくキャラクターの生き様を重視し、殺し合いの中で次々と生まれる倒錯しまくった人間関係。それは手塚と芝浦の例のシーンが顕著だろう。龍騎のテーマである「正義とは何か」に直接向き合うのではなく、龍騎本編でライダーバトルにより歪な絆を深めてきた彼らの「戦いの記憶」を軸に新たな人間模様を描く。この辺りを書かせれば井上敏樹の右に出る者はいない。むしろ芝浦などは当時よりも魅力的な人間に見えてしまう。似たような感覚に陥ったのが、以前発売された『小説版 仮面ライダー龍騎』。こちらも井上敏樹が執筆しており、龍騎という作品を見事に組み替えた作品で、ファンならきっと楽しめる内容になっている。未読の方は是非。

 

 

小説 仮面ライダー龍騎 (講談社キャラクター文庫)

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だが、逆に言えば井上敏樹成分が強すぎるというか。敏樹ファンの私ですら致死量に値するレベルなのに、強烈なアンチは一体どうなってしまうんだろうというほどに井上脚本濃度が濃い。謎を多く残して終わる点など、むしろ555や響鬼後半の流れに近いものすら感じてしまう。平成初期の作品をこよなく愛する私には、井上敏樹が再び龍騎の物語を書くというだけで感無量なのだが、そこに拒否反応が出る人には向かない作品だろう。

 

率直な感想としては、大満足であった。謎が残っているという欠陥もあるが、それも平成初期のファンである私からすればご愛敬のようなもの。何よりここまで『龍騎』をリスペクトし、再現してくれたことが嬉しい。仮面ライダーシリーズは過去作に冷たい(春映画……)印象もあったので、こんなにも真摯に大好きな作品の続編が作られたことが何より嬉しい。情報はまだ少ないが、月末には『仮面ライダーブレン』も控えている。こちらも『ドライブ』の疾走感を楽しめるような作りになっていればと願うばかりである。

 

 

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