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映画『犬鳴村』評価・ネタバレ感想! 中途半端な犬推しが全てをダメにした

犬鳴村 [小説版] (竹書房文庫)

はじめに

『呪怨』で有名な清水崇監督の最新作、『犬鳴村』を観てきた。原作無しのオリジナル映画ではあるが、有名な都市伝説を題材にしているとのこと。事前知識を全く入れたくない派なので終わった後にネットで検索をかけてみたら、Wikipediaに「全て事実ではない」と書かれていて笑ってしまった。都市伝説の内容は単純なもので、犬鳴トンネルの奥地にはダムに沈んだ犬鳴村が存在し、そこに行った者は二度と帰ってこれないというもの。オーソドックスな怪談だが、映画ではこれを物語として昇華する必要が出てくる。

公開前は正直不安であった。私は『呪怨』こそ愛しているものの、その後の清水監督の作品には愛想を尽かしており、3年前に公開された前作『こどもつかい』で完全に見限っている。これに関しては長々と語るよりも観ていただいた方が早いだろう。一言だけ言うならば、別の意味で恐怖を与えてくれる作品である。

 

こどもつかい

こどもつかい

  • 発売日: 2019/07/31
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そんな彼の最新作でこれまでと同様に脚本も担当しているとなると、ホラー映画好きとしてはある程度内容も出来も予想できてしまう。悲しい性である。結果的にはこの予想がズバリはまった。去年『貞子』を監督した『リング』シリーズの中田秀夫監督もそうなのだが、ホラー演出がほとんどアップデートされることなく我が道を進んでしまっている。それに関して細かく述べていこうと思う。もちろんネタバレありなので、未見の方は注意していただきたい。

 

貞子

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犬鳴村から犬を連想

『犬鳴村』というタイトルは都市伝説から採ったものなので、実際には犬との関連はない。だが、やはり名前に入っていれば犬を題材にしたくなるのが人間というものである(?)。犬鳴村の住人は犬を狩ることで生活していたという設定が付与され、終盤では実際に犬も登場する。『ハリー・ポッターと賢者の石』のような、犬に気づかれないように歩かなきゃ!というコミカルなシーンもあるが、初登場が死体を喰っている場面なので全く可愛げはない。

犬鳴村の住民は悪い地上げ屋に言いくるめられて村を失ってしまうのだが、地上げ屋の悪行はそれだけに留まらない。住民が反抗するのを予想した上で、彼らを檻に入れて監禁するなどの仕打ちの後、虐殺を始めた。村にいた若い女性は、犬と交わっているという根も葉もない噂を立てられ、独房に入れられる。その犬というのが、前述した死体喰らいの犬なのだ。犬鳴村というのだから犬と共に狩猟をするのかと思いきやむしろ犬を積極的に狩っていく人々で、それなのに犬と交わっているなどと言われてしまう。「ワンちゃんかわいい」という世間の風潮に真っ向から殴りかかる姿勢は好感が持てる。

しかし問題はここからである。この犬と交わった疑いのある女性が独房で生んだ赤ん坊こそ主人公の奏の祖母というオチで、『呪怨』でも見られた時系列めちゃくちゃ演出により、奏たちはその赤ん坊を運び出し、歴史の通りに祖父の家の前へ向かうというミッションが発生する。この突然の時空の乱れに関しては最早ツッコむことすら無粋だと思うので敢えてスルー。だが、赤ん坊の母親が村人&奏たちの周囲の死者を引き連れてトンネルまで追ってくる。「私の赤ちゃんを返せええええええ!」と叫ぶ女性は、目を黒く染め、牙を剥き出しにして奏たちに襲い掛かってくる。そう、彼女は実は犬人間だったのだ。

 

は?

 

ここで犬人間の独壇場が始まる。確かに奇怪な動作で追ってくる犬人間は恐ろしいけれども、100%CG丸出しの質感なので全く怖くない。しかも定点カメラなので変身シークエンスを見せられているようで笑えてきてしまう。これが舞台だったら演出的に一番の見所だろうが、映画ではそうはいかない。もうこのチープさが本当にダメ。耐えられない。

ラストシーンでの遼太郎くんの犬化を見るに、犬鳴村の人々は犬化の特性を持っていたのだろう。そして、その子孫である奏にも症状が現れ始める…といったところで映画は終了。

だが、何故犬を狩っていた村人たちが犬化するのか、原因はなんなのかという肝心な謎は明かされない。「犬鳴村が恐れられているのは犬化するから」という答えは出るものの、根本的な謎には差し迫らないのだ。どうせならそこも踏み込んでほしかった。

 

イヌ その秘められた力 (吹替版)

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脚本が弱い

もうこれが最もダメなんですよ。演出的にはゾクゾクするシーンなんかもあって割とよかった。ただ、タメのシーンは怖いのにいざドーンと怪物を出すと一気にチープになってしまう。これはもう清水監督の作品すべてに言えることなので今更ではあるけど。

脚本が「弱い」と書いたのは、この映画において何が恐怖で何を乗り越えなくてはならないかという点の説明が省かれているという意味。この映画のスタートは「犬鳴村には入ってはならない」だったのにいざゴールになると「実は主人公も犬人間だったんだよ」になっている。論点がいつの間にかすり替わっているのだ。

奏の兄・悠真とその恋人・明菜が犬鳴トンネルに入り、明菜が狂って自殺したことで犬鳴村の恐怖が始まる。恋人の死に憤った悠真は手がかりを探しに再びトンネルへ。しかし、自由研究で犬鳴村のことを調べていた弟の康太と一緒にトンネルで襲われ行方不明になってしまう。その後も悠真の友人たちが電話ボックスで溺死し、犬鳴村への恐怖をじわじわと広げていく。ここまでは「犬鳴村には入ってはいけない」という恐怖が確かにあった。しかし、ここで奏の母親の突然の凶暴化というシーンが入る。悠真たちが失踪した後、警察と共にトンネルに赴くとそこで突然暴れ出したのだ。尋常じゃない様子と高島礼子の振り切った演技でちょっと笑ってしまうのだが、ここから主人公の家族には隠された秘密があることが明かされていく。

その秘密こそ、前述の犬鳴村の末裔であるという事実であり、つまりは彼女らは犬人間になる宿命を背負っていることになる。だがこの犬人間、別に何をしたわけでもない。奏の母も(不気味ではあるが)歌いながら肉を犬食いしただけだし、赤ん坊の母親も子供を奪われたくない一心で変化しただけである。その過程で悠真を殺してしまうが、主張としては何も間違ってはいない。むしろ錯乱状態の人間にしっかりと説明もせず子どもを取り上げる奏たちの方に非があると思う。

そして最終的に赤ん坊は無事に奏の祖父の家に辿り着き、奏の祖母となる。そこから遼太郎くんの母親が犬鳴村から逃げた女性であることが示唆され、遼太郎くんが犬化。そして奏も母親と同じように唄を歌って犬化。でもこの犬化自体が全く怖くないんですよ。

確かに犬人間ってちょっと気持ち悪いけど、そこまで理性を失うわけでもないし一生犬人間のままなのかとかの説明もないし、正直「犬人間になる」ことの恐ろしさが全く伝わってこない。奏たちも犬鳴村の血筋であることはもう決定なわけだけど、彼らは不当に住処を奪われただけの哀れな人々で、どこも恐ろしくなんかない。奏も犬人間でしたと言われたって「で?」って聞き返したくなるだけ。実は主人公も…的な『世にも奇妙な物語』風のラストなんだけど、雰囲気だけでまるで意味が伴っていない。ただでさえ「怪異は続くよどこまでも」な終わり方は嫌われるのに、こんなスカスカな手口でやられたらもうどうしようもない…。

 

日本現代怪異事典

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  • 作者:朝里 樹
  • 出版社/メーカー: 笠間書院
  • 発売日: 2018/01/17
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最後に

そんなこんなで不満ばかりになってしまったが、車の窓から明菜が何度も飛び降りるところが見えたりするシーンはよかった。あと死体がいちいち登場後に咳き込むのもいい演出。細かい点で加点はできるけど、でもやはり大筋が本当に酷いよなーと思ってしまう。結局彼らが何で襲われたのかとかもよく分かっていないし。犬鳴村に入った人が死ぬのなら悠真の友人たちと同様にトンネルの前まで行った警察や奏の両親も死ぬべきだし。その辺のルールがぼやけているせいでイマイチのめり込めなかった。

先月公開された乙一監督・脚本のホラー映画『シライサン』がめちゃくちゃロジカルな作品で思わず感動してしまったので、またこんなふわふわしたJホラーが出てきてしまい少しがっかりである。がんばれ! Jホラー!

 

犬鳴村〈小説版〉 (竹書房文庫)

犬鳴村〈小説版〉 (竹書房文庫)

 

 

 

 

 

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