アニメ版を観てようやく『BURN THE WITCH』の凄さが分かった

 

BURN THE WITCH (特装限定版) [Blu-ray]

 

週刊少年ジャンプは毎週読んでいるので、『BURN THE WITCH』は当然読み切り版の頃から読んでいるし、この前の1ヶ月限定連載も結構楽しめた。ただ、『BLEACH』すらも完走していない僕にとっては正直、世間の熱に浮かされているような気持ちもあって。確かに面白いには面白いんだけど、周りが絶賛するほど熱中できてはいなかった。だが、2020年10月2日、この作品への感情が圧倒的に強まってしまう。

 

ファンの皆さんはご存知の通り、本日は『BURN THE WITCH』の劇場アニメ公開日であり、Amazon Primeなどでも全3話に分けられたものが配信された。更に、早速単行本第1巻が発売。こちらには読切版も掲載されている。休みだった私(『呪術廻戦』のアニメを本気で観るための休暇)はまあ今日配信されるなら観ておくか~くらいの気持ちで午前9時と言われた配信を待ちわび、システム障害のお知らせにイラッとしながら、先ほどようやく観終えた。結果、感動。単行本第1巻を読みながらシーンを照らし合わせていたのだが、物語の美しさに惚れ惚れしてしまった。いや久保先生、さすが70巻越えの作品を手掛けてきただけあるし、そんな方が(週刊誌なのに)週刊連載という制約に縛られず新たな物語を手掛けるのならこれぐらい面白いのも当然なんですよね。週刊連載の時はああそういう話ね、という納得の方が強かったのに、1巻まとめて読むと細かい部分の理解が捗って止まらなくなってしまった。マジでこれが週刊連載じゃないのが惜しい。続きがいつ読めるか分からない富樫状態になってしまった…。

 

アニメ版の物語は原作を概ね準拠していて、久保先生もこのタイミングでやるからにはときっちり監修しているらしいので、追加のセリフも違和感がないし、削除されたシーンもギャグテイストのものだけだった。確かアニメBLEACHのことも散々言ってたもんね…。原作付きアニメお馴染みの設定語りナレーションを、キャラクターのやり取りだけでしっかりと説明し、アクションは大幅に追加する。漫画のコマをただ繋げるだけの動きではなく、きちんと演出やアクションが追加されていて、劇場で観るアニメーションとして完成されている。何より作画。さすが最初から劇場公開のアニメはテレビアニメとはレベルが違う。ロンドンの街並み一つとっても細部まで書き込まれていて素晴らしいし、ドラゴンに乗って戦うリリーとのえるも大迫力。一番感動したのはブルーノがリッケンバッカーを召喚するシーンです。今回登場したドラゴンは変化球が多いので、リッケンバッカーの「ザ・ドラゴン」とでもいうような出で立ちに見事にノックアウトされてしまった。稲光と共に現れる演出がグッド。

 

ストーリーは概ね原作に準拠している、というか流れは同じなので目新しい発見はなかった。読切版の物語はアニメ化されていないので、初見の人は設定の理解が追いつかない部分もあるかもしれない。バルゴがリバース・ロンドンに来る話が丸々カットなので、まあその辺りが気になる人は単行本1巻を買ってもらうしかなさそう。ただこの読切、バルゴが本当にコンプラ的にスレスレというかアウトなレベルの変態キャラになっているので(僕も初見では結構無理だった)、ちょっと驚くかもしれない。読切はのえるの「制服が好きだ」という独白から始まり、彼女がフロント・ロンドンで関わっていたバルゴが仲間入りするまでの物語だが、これは第1話がリリーの「おとぎ話なんかクソでしょ」から始まり彼女の友人であるメイシーが仲間入りするまでの構成であることと対になっている。まさに表と裏。物語の構造が本当に巧いし、そこにキャラクターの性格や設定がしっかりくっついてくるのもサイコー。

 

だって「おとぎ話なんかクソでしょ」という凄味のあるセリフから始まる一連の物語でリリーがおとぎ話を嫌う理由が「他人の力に頼るから」だと説明して、おとぎ話に関連するドラゴンを登場させてって、このワード1つに一体どれだけ意味付けする気だよ、と。さすが詠唱呪文を書かせたら右に出る者はいない男・久保帯人。耳ざわりだけでなく言葉の意味合いまで自由自在なのか…と一人で感動してしまった。

 

物語としても序章ということで、かなり伏線が張られている。ちょっと頼りないチーフがシンデレラを一撃で倒してしまう(しかもそのことを誰にも話さない)のは、黒崎一心が実は死神だったレベルの衝撃だし、トップ・オブ・ホーンズの登場もワクワクさせてくれる。このシーン、8人の幹部が登場(うち一人は欠席)するのに喋るのはほとんどブルーノ一人というところがなんか画期的で面白いんですよね。幹部総登場は少年漫画あるあるなんだけど、この見せ方は新しいというか。大体一人一言ずつが基本で、うち一人その後すぐの展開で見せ場があるキャラだけがやけに喋る、みたいな。それを他のキャラクター誰一人喋らせない(ロイに一言だけ)のヤバいし、ここでバルゴ討伐過激派のブルーノが大暴れしてるし実際リリー達も襲ってくるのにシンデレラの登場で頼もしく見えてくる演出も最高。情報量が尋常じゃないのに、ちゃんと物語は頭に入ってくる感じ。さすがプロだなと思う。

 

とまあ、ざっと「バーンザウィッチサイコー」をいろいろ言ってみただけなのだが、今は第2巻が本当に待ち遠しい。第1巻のコメントで「好きなペースで漫画を描く」ことに憧れていたと久保先生が書いていたが、実際それをやっていて締め切りのプレッシャーから解放されたのならかなり好き勝手できるしそりゃあこれだけ高品質なものもできるよなーと。週刊連載の漫画家から週刊連載を奪うとここまでクオリティの高い作品が出来上がるのか。いや、週刊連載をしなくてよくなるまでが難しいのだろうけども。次回はバルゴ討伐の会議に欠席していた開発隊の長官が登場するようで、その容姿や性格も非常に気になるところだが、次の連載開始はいつ頃なのかまるで決まっていない様子。ちょっと残念…でも気長に待ちます。何年でも待ちます! ジャンプ読者はハンタのおかげで鍛えられているんです! できれば年1回くらいのペースでお願いします!

 

 

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  • 作者:久保 帯人
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