映画『オーバーロードZ』ネタバレ感想! 面白さゼロ

 

オーバーロードZ(字幕版)

 

ナチス映画でゾンビものとくればピンとくる方も多いはず。そう、紛うことなきB級映画です。タイトルやポスターからもヤバい匂いが伝わっていると思いますが、内容自体も低く構えたハードルを思いっきりくぐってきました。こんな映画が海を渡ってきたことにどんな意図があるのかと、配給側の裏事情を勘繰ってしまうほどの酷さ。

 

「Z」がタイトルについていると、最初に思い当たるのがゾンビ(zombie)だと思います。ポスターにも干からびた白目のおどろおどろしい男が大きく配置されていて、「なるほど、ナチスのゾンビ兵士をアメリカ軍が殺しまくるのかな」とB級らしい期待を膨らませてくれますが、肝心のアクションが酷い。まあアクション以外も酷い出来なんですけども。はじめにゾンビ関係なく戦争のシーンがあるのですが、この数分で一気に感情が死にます。戦時中なので一応銃撃戦が用意されていますが、銃弾の演出も安っぽい上にその後は銃を構えているシーンに音を付け足しただけで、発光すらケチり、演者のビクンという揺れで済ます始末。その後も制作費全然なかったんだろうなあ…という思いが常に頭をよぎり、現場の苦労が画面上からビンビン伝わってきます。それがどうしようもないノイズで、ただでさえ面白味のない脚本を更に伝わりづらくしていました。まあ銃がダメでも身体は役者のギャラだけで賄えるわけなんでアクションにも期待したのですが、無念。せっかくムキムキマッチョがズラッと並んでいるのに、肉体美を披露する場もないまま映画が終わってしまいました……。

 

まあ演出がダメでも脚本がよければ全然オーケー派なんですよ。ただ、この映画は脚本も酷い。第一線で戦っていた主人公の部隊がナチスに誘拐された女性科学者の救助を任命されるのですが、いざ敵のアジトに忍び込むと実はその科学者主導で世界を手中に収める恐ろしい計画が進んでいた…というあらすじ。ここまではパッケージにも記載があるのでそこから物語がどう展開していくのか楽しみにしてたのですが、科学者が実はナチス側だと判明するのが大分後半。よほどパッケージに書くあらすじがなかったのか…。

 

しかもここまでゾンビなし。マッチョ部隊が次々と襲い来るナチゾンビと戦うバカ映画を楽しみにしていたのに、筋肉は使わないしゾンビは出ないし私の頭は大混乱。終盤は全く興味を失ってしまいました。

 

しかし話が本格的に動き出すのはラスト30分。まあ動き出すと言っても震度1くらいなわけですが……。女性科学者の目的は虫を媒介にした殺人ウィルスによって世界を支配しようというものでした。自らが支配者になるためにはウィルスの抗体を獲得する必要があり、その開発に時間を費やしていたというわけです。ただこれも主人公達の行動が彼女の計画を早める要因になったとかそういった上手い構成がなされているわけではありません。完成間近のところに偶然主人公達が現れたのです。早速実験台にされてしまう彼ら。そして遂に研究は成功し、女性科学者はこの世で唯一ウィルスの抗体を持つ者となりました。まあその後はなんやかんやで脱出。火炎放射器(これのCGも酷い…)で虫をすべて焼き払うも、生き残ったのは隊長1人。女性科学者の裏切りや仲間の死を上司に報告している最中に突然苦しみ出す隊長。女性科学者は最後の切り札として、隊長の体内に虫の卵を植え付けていたのです。虫が増殖し、地球が徐々に黒く染まっていくというカットで映画は終了。ここまで感情を殺しにくる映画なのにハッピーエンドにすらさせてくれないとは……。

 

まあいろいろな意味で拙いことだらけで正直どうしようもない映画なので褒めるところは一切ありません。本当に何でこんな作品が海を渡ってきたのやら…。

予算が少ない中で何とかやりくりしようという苦労はうかがえますが、作品から作り手の苦労が透けて見えてしまうのはいかがなものかと。総じて本当に観るのがキツい作品でした…。