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映画『2分の1の魔法』評価・ネタバレ感想! 魔法が淘汰された世界で描かれる兄弟の絆

3月公開予定だったはずが、コロナウイルスの影響を受けて夏休み公開になってしまったピクサー最新作『2分の1の魔法』がようやく公開。期待していた1作なのでこの5ヶ月が本当に長かった。劇場に座り爆音で聴く全力少年にもいい加減飽き飽きしていたところ。 『モンスターズ・ユニバーシティ』のダン・スキャンロン監督が、今回はオリジナル作品に挑戦。凸凹コンビが主人公という意味では前作と同じだが、今作ではそこに兄弟・家族の絆という要素が加えられている。原題は『Onward』と簡素だが、分かりやすい邦題も鑑賞後には意味が何重にも込められていることが分かる。MCU作品でお馴染みのクリス・プラットとトム・ホランドが声優…

映画『ミッドサマー』評価・ネタバレ感想! 少女が失恋を乗り越える最悪の物語

『ヘレディタリー 継承』のアリ・アスター監督最新作、『ミッドサマー』が遂に公開。あらすじを説明するのも難しいし「とにかく観てくれ!」というタイプの作品なので、一番いい宣伝文句が「ヘレディタリーの監督の最新作」という形に落ち着いてしまう。早速観てきたのだが、もうそれはそれは恐ろしいというか。アリ・アスター監督の芸術センスが抜群に光っており、もうどうしようもないのだ。よくぞこの人を映画監督にしてくれたという気持ちと、よくもコイツを映画監督にしてくれたなという気持ちがせめぎ合う。ヘレディタリーを観た人はきっともうアリ・アスターという名前を聞くだけであの奇妙な感覚に囚われるようになってしまったと思うが…

映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』評価・ネタバレ感想! 完璧な完結編でした

『デジモンアドベンチャー』の最新作が公開と聞いた時、私は不安を通り越して怒りを感じていた。デジモン世代ど真ん中の私にとって、2015年から始まった全6章の『デジモンアドベンチャー tri.』の出来は本当に苦しく、もう二度とデジモンを観られなくなってもいいと思わせたほどだった。続編でトーンがガラッと変わることや人気漫画の実写化なんかも比較的耐性がある方だと自負しているのだが、この『tri.』だけはどうしても許すことができず、第2章の時点で劇場に足を運ぶことを止めてしまった。その後、円盤化されるタイミングで3章を鑑賞。しかし、結局怒り以外の感情を持てずそのまま断念。『LAST EVOLUTION …

映画『シグナル100』評価・ネタバレ感想! どう考えてもシグナル20くらいでよかった

1000年に1人の美少女という二つ名も聞かなくなって久しい昨今だが、ようやく橋本環奈が主演を務める映画が公開した。その名も『シグナル100』。原作はヤングアニマルにて連載された人気コミック。担任教師によって、特定の行動をとると自殺してしまう催眠にかかった生徒達の惨劇を描いた作品である。 原作者の宮月新は『不能犯』の原作も務めているため、彼の作品が実写映画化されるのはこれが2度目。『不能犯』はストーリーこそ物足りなかったものの、私が敬愛している白石晃士監督だったおかげで演出面においてそれなりに楽しむことができた。しかし、『シグナル100』と『不能犯』は心理学の要素があること以外はテイストのまるで…

映画『1917 命をかけた伝令』評価・ネタバレ感想! ワンカットの説得力に呑まれる

『007 スカイフォール』などのサム・メンデス監督の新作はイギリスの実話を元にした戦争もの。前線部隊に作戦中止の命令を届けるために奔走する伝令係2人のバディムービーだ。特筆すべきは「全編ワンカット」であること。しかし、宣伝ではワンカットワンカットと謳っているが、実際にはそう見せているだけの擬似的なワンカットらしい。公式サイトにはきちんと説明されているので、予告映像しかチェックしていない観客は偽りの謳い文句に誘われたことになる。 しかし、この映画の末恐ろしい点は実際に鑑賞しても本当にワンカットにしか見えないこと。擬似だと知っていれば「あ、ここで明らかに編集入ったな」と勘付くシーンもあるのだが、ワ…

映画『犬鳴村』評価・ネタバレ感想! 中途半端な犬推しが全てをダメにした

はじめに 『呪怨』で有名な清水崇監督の最新作、『犬鳴村』を観てきた。原作無しのオリジナル映画ではあるが、有名な都市伝説を題材にしているとのこと。事前知識を全く入れたくない派なので終わった後にネットで検索をかけてみたら、Wikipediaに「全て事実ではない」と書かれていて笑ってしまった。都市伝説の内容は単純なもので、犬鳴トンネルの奥地にはダムに沈んだ犬鳴村が存在し、そこに行った者は二度と帰ってこれないというもの。オーソドックスな怪談だが、映画ではこれを物語として昇華する必要が出てくる。 公開前は正直不安であった。私は『呪怨』こそ愛しているものの、その後の清水監督の作品には愛想を尽かしており、3…

ホラー映画『シライサン』評価・ネタバレ感想! 乙一によるJホラーの再構築

日本のホラー映画と聞いて、『リング』や『呪怨』を想起する人は圧倒的に多いと思う。『テケテケ』とか『着信アリ』とか『ノロイ』とか、有名作や話題作はたくさんあるけれど、それでも日本のホラー映画は貞子と伽椰子の呪いから未だに解き放たれないでいる。この2作が傑作であることは揺るがないが、それでも現代的な視点を持ち込むとやや古い。貞子のキモである呪いのビデオなんて、今の子ども達はあの黒い長方形の物体を観てもなんだか分からないのではないだろうか。そのことには作り手も自覚的で、昨年公開された『貞子』では、Youtuberの撮影した動画に貞子が映り込んだことから呪いが始まる。「ビデオを観た者は死ぬ」から「撮影…

映画『カイジ ファイナルゲーム』評価・ネタバレ感想! 藤原竜也との再会にそぐわない退屈なゲーム

実写版カイジが9年ぶりに完結編として復活。原作者の福本先生が考案したゲームをもとに、映画オリジナルの物語が描かれる。「藤原竜也が出演する実写化映画は傑作」とまで言われてしまうほど、漫画の実写化映画の金字塔となったカイジシリーズ。令和の時代に再臨した彼は相変わらずのクズ&天才ギャンブラーだった。我々日本人にとって、藤原竜也があの格好で「汚ねえぞ!」と叫んでいるのは最早様式美である。底辺の人間が、自分たちを見下す金持ち達にギャンブルで勝利する爽快感、そして各ギャンブルが生み出す緊張感が見物のこの映画だが、これまでの2作に比べると、爽快感も緊張感も薄かったかなあと感じた。それはこの物語のスケールがと…

映画『パラサイト 半地下の家族』評価・ネタバレ感想! ギャグによって巧妙に観客に寄生していくパラサイト映画

この記事は内容のネタバレ・結末に触れています。未見の方は注意してください。 ポン・ジュノ監督の名前と評判は知っていたのだけれど、恥ずかしながら過去作は1度も観たことがなく…。最新作が公開されると知り、敢えて過去作を観ずに先行公開に飛び込んだところ、これが大当たり。むしろこれまで監督の映画に触れてこなかったことを後悔するばかりであった。 宣伝ではネタバレ厳禁とされているし、映画の前にはご丁寧に監督から「ネタバレしないでね」とコメントまであるのだけれど、決してネタバレが映画の魅力を貶めることにはならない。もちろん何も知らない方が楽しめるが、知っていても十分引き込まれる映画だと思う。それほどまでに内…

映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』評価・ネタバレ感想! A組の活躍に湧き、ラストに絶望する

大人気漫画『僕のヒーローアカデミア』が2度目の映画化。前作は、デクとオールマイトの共闘という原作では不可能となってしまった展開で観客の度肝を抜いたものの、お話としてはごくごく普通のジャンプ原作アニメの映画化といった感じで、正直そこまでの興奮はなかった。元々ヒロアカにぞっこんという程のめり込んでもいない人間なので、どうしても斜めに見てしまうのだが、いやあ今回『ヒーローズ・ライジング』はやりやがったな~という思いです。堀越先生、本当に盛り上げ方が巧い。ジャンプ漫画が映画化することの意味をしっかり理解している。前作のラストはひたすら興奮していたけど、今作の最終決戦には物悲しさがある。入場特典のインタ…