映画『ダーククリスタル』評価・ネタバレ感想! 子供に見せたい王道ファンタジー!

ダーククリスタル (字幕版)

 

1983年に公開されたファンタジー映画の名作『ダーククリスタル』が、近々Netflixで復活する。前々からタイトルは聞いていたものの、ファンタジー映画に耐性のない私は全く手を付けずにいた。しかし、新作が配信されるというし、Netflixで映画版の配信も始まったしということで、意を決してこの名作を鑑賞。物語は少年が世界を救うという王道ファンタジーだが、その真髄はセットや造形の作り込みにあった。正直30年以上前に公開された名作のレビューを今更するというのもなんだかおこがましい気がするのだが、感動を覚えたものに関してはやはり何かしら言語化しておきたい。大して知識のない映画好きが、素人なりにこの映画をどう観たか、そういう視点で読んでいただければと思う。

 

世界は大きく分けて、善のミスティック族と悪のスケクシス族の2種類に分かれており、両種族の残りは10人となっていた。ミスティック族のマスターに拾われ育てられたゲルフリン族唯一の生き残りであるジェンは、マスターが死に際に放った言葉によって、世界を破滅から救うためにクリスタルの破片を探す旅に出る。同じ頃、スケクシス族の皇帝の命も尽き、新たに皇帝となった将軍はゲルフリン族であるジェン殺害を命じるのだった。

 

物語に関しては言うまでもないだろう。臆病で気弱な少年が、運命に導かれて世界を救うための旅に出る。その道中で同じ境遇の少女と出会い仲を深めていく。平成が終わった今では頭が痛くなるほどに見慣れたストーリーだ。しかし、その王道っぷりが逆にファンタジーが苦手な私でもスッと頭に入りやすいというか。人類のDNAに刻み込まれた「ファンタジー」という概念が生の状態で提供されている感覚が、苦手意識を薄める。子ども向けの作品でもあるし、変に設定に頭を使う必要はない。少年が世界を救うために旅に出る、これだけ分かれば十分なのはありがたい。

 

しかし、この映画の真髄は前述の通り、セットや造形の作り込みにある。それこそ2010年代ではまずお目にかかれないような手作り感。しかもそれが細部に至るまで徹底的にこだわられている。パペットとは思えないような繊細な動作や表情、所作の一つ一つに生活感が溢れている。今ではCGで事足りてしまう表現が、(もちろんCGを作るのも大変だということは分かっているが)確かな質感を持って映像作品として成り立っているという事実が興奮を呼ぶ。この辺り、映画に大してこだわりを持たない人でも、きっとすげえと思ってしまうはずだ。それほどまでに細かい。監督を務めたのは『セサミ・ストリート』などを手掛けたジム・ヘンソンと『スター・ウォーズ』でヨーダを務めたフランク・オズ。なるほど、確かにどちらもパペット作品の代表作である。

 

特に感動したのは、食事シーンなどの直接物語に関わらないシーンがきちんと挿入されていることである。皇帝が「肉が腐ってる!」と怒り狂うシーンは、物語の上では何の意味もなさない。キャラクター造形として皇帝の沸点が低く、傲慢であることを示すことはしているけれども、それでもわざわざテーブルを作って料理を出してという工程を踏むのはかなり遠回りだ。その小道具を全て作らなければならない。食事シーンに対し、細かい料理を全て一から、しかもファンタジーなのでその見た目までこだわって創造しなくてはならないのである。この作り手たちはパペットの表現を徹底的に楽しんでいるんだな~というのがあらゆる場面から伝わってくる。作り手のこだわりと楽しさが、画面の隅々からあふれ出しているのだ。

 

普段ウルトラマンシリーズなんかを楽しんで観て愉快な生活を送っている私なんかは、もう手作りのパペットがあそこまでヌルヌルと動いている時点で感動してしまう。しかも物語は複雑でなく、頭を空っぽにしても十分話を理解できる(ほめてます)。それでいて、背景やキャラクターが深く作り込まれているおかげで、世界観を広げることにも一役買っている。この見事なバランスこそ、『ダーククリスタル』が名作たる所以だろう。

 

日本では、残念なことに実写のファンタジー映画はほとんどウケない。SFですら敬遠される国なのだ。何よりそこまでの作品を作る予算がない。コミックの実写化にしても、完全なファンタジーのものはなかなか現れない。一方アニメーションでは、「なろう系」や「ハーレムもの」に分類される作品が深夜帯を跋扈しており、三ヶ月に一度のペースで美男美女が世界を救っている。「ファンタジー」という言葉の概念も何周かして、より細分化されている時代だ。しかし、『ダーククリスタル』の新作がせっかく配信されるというのだから、ここらで王道ファンタジーに目を向けてみてはどうだろうか。この温かみといい、作り込みといい、将来子どもに見せたい映画としてかなり上位に食い込む。新作の配信が楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

ケーブルバイト セサミストリート エルモ

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