映画『コンフィデンスマンJP』ネタバレあらすじ&感想! 詐欺のスケールもグレードアップ!

 

コンフィデンスマンJP Blu-ray BOX

 

昨年放送された月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』。その劇場版が遂に公開された。今作は日中韓合同制作という映画ならではの大規模な試み。『リーガル・ハイ』や『デート』などを手掛ける人気脚本家・古沢良太がドラマ版に引き続き、脚本を担当。ダー子をはじめとするお馴染みのキャラクターたちが、香港を舞台にスクリーンで暴れまわるという非常にスケールの大きい作品となっている。更に、香港を牛耳り氷姫の異名を持つ女帝役に竹内結子、ダー子と因縁の深い、恋愛詐欺を得意とするコンフィデンスマンに三浦春馬を迎え、第1話でも登場した江口洋介までもが物語に深くかかわってくる。そのほかにも小池徹平、吉瀬美智子、佐藤隆太などドラマ版でダー子の標的になった人々も登場。また、物語の発端は江口洋介によるダー子たちへの報復であり、まさにドラマ版の集大成ともいえる出来になっている。時系列はおそらく第1話の後。明確に経過した年月は語られないが、ボクちゃんが”足を洗った”ことからも、1話ラストの後と捉えるのが妥当だろう。

 

 

ノーダウト

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『コンフィデンスマンJP』自体、トリック等の緻密さではなく、テンションとスケールで押し切るような作品だったが、劇場版という舞台を活かしてか、今回の仕掛けも非常に大掛かりなものとなっている。

以下にざっくりとネタバレであらすじを書いていく。

氷姫が持つ高級な宝石を盗もうと企んだダー子たちは、妹分のモナコを連れて早速香港へ。祈祷師を名乗り、占いに傾倒する氷姫に近づこうとするダー子とモナコだったが、そこにダー子がかつて身も心も奪われた恋愛詐欺師、ジェシーが現れる。ダー子たちと同様、宝石を奪おうと企んでいたジェシーはダー子に共同戦線を持ち掛ける。やがて、氷姫が本当に望んでいたものはかつて別れた元夫だったことが判明。3人は、氷姫と元夫に同時に手紙を送り、駆け落ちさせようと画策する。しかし、ジェシーの妨害によって元夫は空港に現れなかった。失恋した氷姫の隙を突き、彼女の心を奪おうとしていたのだ。若い女性と浮気した元夫を見て絶望する氷姫の前に、絶好のタイミングで現れるジェシー。しかし、そこにダー子が駆けつけ、「ジェシーは私のものよ!」と銃で氷姫を撃ってしまう。彼女を庇い銃弾を喰らうジェシー。すぐに病院に運ばれ、氷姫は夜通し病室に付き添うが、朝目を覚ますとジェシーが消えているどころか病院はもぬけの殻。全てはダー子とジェシーによる、宝石を奪うための作戦だったのだ。

ボクちゃんたちまでをも裏切ったダー子は、ジェシーと共にヘリコプターに乗ってトンズラを決め込む。「君のことが好きなんだ!」というボクちゃんの説得にも応じることなく、ヘリに乗り込もうとするダー子だったが、既に江口洋介演じる赤星が乗っていた。ダー子たちに復讐を誓った赤星は、ジェシーを利用して彼女らを一網打尽にし、氷姫の宝石までも手に入れる作戦を立てていたのだ。ダー子が妹分として可愛がっていたモナコも、実はジェシーの仲間。全ては赤星とジェシーの思惑通り。ジェシーを信頼していたダー子すらも裏切られていた。しかし、そこに真相を知った氷姫が警察を連れて現れる。拳銃を構え一触即発の空気になるも、赤星とジェシーはヘリで逃亡。ダー子、ボクちゃん、リチャード、五十嵐、そしてダー子たちを見捨てられなかったモナコは全員警察に逮捕されてしまう。

しかし、赤星が手に入れた宝石を鑑定させると、偽物であることが判明。ジェシーを連れて氷姫に会いに行くも、彼女の屋敷は空き物件になっていた。そう、実は冒頭からの展開すべてがダー子たちの策略。彼女らの今回の標的はジェシーだったのだ。子ネコちゃんの一人(前田敦子)がジェシーに騙されたことを知ったダー子は、次の標的をジェシーに決定。また、遊園地でヒーローショーのスタントマンをしていたボクちゃんは赤星が自分たちへの復讐を企てていることを知る。どうせなら二人まとめて釣り上げてしまおうと、二人を接触させ、わざと自分たちと氷姫を狙わせるように仕向けたのだった。つまり、この映画は何もかもがウソ。映画のあらすじも登場人物も嘘だらけで、氷姫は実在するが竹内結子ではない。彼女の正体はダー子が”スター”と崇める凄腕詐欺師で、宝石も偽物。そうとも知らず、ジェシーは彼女から宝石を騙し取ろうと腐心していたのである。

 

コンフィデンスマンJP 運勢編 (扶桑社文庫)

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要するに、全てがダー子たちの演出というある意味拍子抜けするようなラスト。しかし、そこに説得力を持たせるのは長澤まさみの振り切った演技をはじめ、愉快な登場人物たちの振る舞いにあるのだろう。ドラマ版で積み重ねてきた”最後には絶対にダー子たちが勝つ”というお約束を利用し、冒頭の時点で”既にダー子たちが勝っていた”という段階にまで昇華させた。この安心感に内包されたドキドキハラハラとでもいうような、「今回はどうやって裏切ってくれるのだろうか」という妙な期待感は、なかなか得られるようなものではないと思う。

たとえばミステリー作品なら、一見犯行が不可能に見えるような事件にどんなトリックが用いられたのかが焦点となる。バトルものであれば、勝てそうもない敵にどんなロジックで勝つのかが重要なポイントになる。しかし『コンフィデンスマンJP』が積み上げてきたのはもう一つ高次の次元の問題である。いかにして勝つか、どうやって敵を信用させるかという点のロジックは敢えて描かず、テンションと詐欺の規模で押し切るという手法。ダー子たちの勝利という前提条件がありながら、視聴者は見事に騙されてしまう。そして、その標的に付随するドラマは高レベルの水準を誇っており、ドラマ版も後半以降は涙を誘う回が何度もあった。今回も氷姫の一途な乙女心にダー子のジェシーへの思いを絡ませて、そういったドラマを展開してくるのかと思いきや、全てが真っ赤な嘘という大胆なシステム。おそらくドラマ版を楽しめた方なら、満足できるはずだ。

 

「月9」というブランドも既に懐疑的に思われるほど、日本人のドラマに対しての熱は下がってしまったかもしれない。小説や漫画が原作のテレビドラマも多くなり、話数も以前より格段に減った。海外ドラマの方が面白い、日本のドラマはオワコンなんて言い方もよく耳にする。確かに流行りの俳優がルーチンを組んで出演する昨今のテレビドラマ業界には物申したくもなるのだが、その中でもこれほどまでに楽しくなれる作品があるのは事実。頭を空っぽにして観られる勢いの良さと、重厚なドラマ、視聴者をきちんと裏切ってくれる頼もしさ、それらすべてが同居した見事な作品だったと思う。ストーリーとしては今後に続編が作られても何の問題もなさそうなので、ぜひ2期に期待したいところ。

 

 

フジテレビ系ドラマ「コンフィデンスマンJP」オリジナルサウンドトラック

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コンフィデンスマンJP Blu-ray BOX

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コンフィデンスマンJP(上) (扶桑社文庫)

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