映画『パージ:アナーキー』あらすじ&ネタバレ感想! スケールを増した犯罪合法化の夜

 

パージ:アナーキー (字幕版)

 

今度新作が公開されるというので、全く未見だったパージシリーズに手を出してみた。1作目の『パージ』は斬新な設定の割にスケールはこじんまりとしていた。しかし、”殺人が合法化される”ことの恐ろしさと、それに付随する社会問題まで視野に入れ、90分というしゃくに収めた見事なエンターテイメントだと思う。1作目に関しては別でまとめてもいるので、詳しくはそちらで。

 

 

 

パージ (字幕版)

パージ (字幕版)

 

 

 

この続編『パージ:アナーキー』は、前作よりもはるかにスケールアップが図られていた。前作の舞台は富裕層の自宅で物語も家族を中心にしていたが、今作ではパージの夜に偶然出会った5人の男女の物語。NFFAという反パージ団体の存在にまで及んだ描写は、斬新な世界観をより広げることに成功している。しかし、スケールアップをしながらも、根底的なテーマは1作目と何ら変わっていない。パージを行うことへの葛藤、犯罪が合法化されようと人であろうとする者たちの強さ。展開自体に斬新さはないものの、その美しい結末のおかげで余韻に浸ることができる。個人的には1作目より好みかもしれない。

 

1年前に飲酒運転の事故によって息子を失ったレオは、今年のパージでその犯人を殺そうと決意する。しかし、その道中で殺戮集団に追われる家族や夫婦を助けてしまう。「車から降りろ!」と言いながらもなんやかんや彼らを心配しているしとても強い。観客を一瞬で虜にするキャラクター像。レオに救われた1人であるエヴァは彼の復讐を止めようとする。車の用意があると嘘もつくし、とにかく自分を救ってくれた彼を見過ごせないのだ。せっかく人の命を奪う覚悟を決めていたのに、彼女らとの出会いでレオの心は揺らいでしまう。

 

結局レオ達5人は殺戮集団に拘束され、ある場所へと連れて行かれる。実は彼らは富裕層に金で雇われたチンピラで、5人は富裕層がゲーム感覚で殺しを楽しむために用意された獲物だったのだ。暗視スコープと強力な武器を手に次々と襲い来る刺客を、1人ずつ不意をついて殺していくレオ。かなりカッコいいシーンなのだが、富裕層が隠れて殺人ゲームをするのは、別にパージの夜でなくてもよいだろうに…。前作で家族を襲った集団も、貧民を殺すことを楽しむ集団だったが、彼らの振る舞い(といってもビデオカメラ越しに遊んでいる姿が映っただけだが)からは、普段豪遊生活を楽しんでいる者がパージの夜に人間としての温かみを捨て去りホームレス殺しを決行するというギャップの恐ろしさがあった。

 

しかし、本作の富裕層はなぜか人目をはばかりながら殺人ゲームをしており、パージ後の本来の生活が大事なのかなとも思うが、それでもやはりコソコソする必要はないはずである。そのためのパージなのだから、1作目のように堂々と人を殺せばいいのだ。ただ、敢えて丸腰の人間を獲物にするといういやらしさのおかげで、より残忍さは増したように思う。

 

レオが数人を殺したことで、富裕層は大群で会場に突入。戦力差から考えて勝利は絶望的に思えたその時、反パージ団体のNFFAが現れ、富裕層を次々と撃ち殺す。彼らはパージが実質口減らしであることに気づき、貧民を殺す富裕層を許さないという信念の持ち主なのだ。そうして助かった彼らは(夫妻の夫だけは殺されてしまう)、夫妻の妻を残して3人でレオの因縁の相手の元へ向かう。自宅に侵入し、銃を向け、レオは息子を殺した男を殺そうとする。しばらくして家から出てくるレオだったが、何者かに撃たれてその場に倒れてしまう。撃った犯人はレオが親子を助けた時に戦ったメンバーのリーダーだった。彼曰く、「パージには暗黙の掟がある。人を救ってはならない」。つまり、人を救ったレオはルール違反だというのだ。そして、パージの本質が犯罪の抑制ではなく、口減らしにあることも彼の口から語られる。反パージであるNFFAが政府に野放しにされているのも、適度に富裕層を殺してくれるためだ、と。つまり目的のためには敵すらも利用するということ。パージの闇は思った以上に深いようだ。

 

レオを撃った男は、家から出てきた別の男によって殺される。実はレオは復讐の相手を殺していなかったのだ。政府がやってきてレオにとどめを刺そうとする寸前、パージ終了の合図が鳴り、惨劇の一夜は終わる。

 

殺さないことこそ美徳という1作目と同じ帰結を迎えた『パージ:アナーキー』。確かに登場人物は増え、舞台も広くなったものの、まだ設定を活かしきれていないようには感じる。より印象的な殺人鬼キャラと、その獲物との攻防戦なんかが繰り広げられればもっと面白くなると思うのだが、どうやらパージはその方向性の作品ではないらしい。ただ、テーマが一貫している点には好感が持てるので、今後の展開にも期待したいところ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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